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優等生が陥る「科学のワナ」

東京工業大学本川達雄教授×池上 彰 第2回

2012年9月6日(木)

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池上:本川先生は、高校生の頃、「役に立たないことをやろう」と思って、生物学を志したと伺っていますが、なぜ、そう思ったんですか。

本川:私は1948年生まれですから、いわゆる団塊の世代です。高度成長期まっただ中に育ちました。高校1年の時に東京オリンピック。焼け跡から豊かな時代への変化を、身をもって感じていました。

 そういうイケイケどんどんの世代ですから、理系で一番人気はすぐに仕事につながる工学系です。算数ができる子どもはみんな工学部へ行きました。当時、東工大も定員が3倍くらいにどーんと増えたはずです。

算数ができると、“役に立つ”人間になれた時代

池上:私も先生より2つ下で同じ光景を見て育っていますから、時代の空気はよくわかります。アメリカとソ連が対立する東西冷戦時代で、1957年、ソ連がアメリカに先駆けて人工衛星スプートニクの打ち上げに成功した「スプートニク・ショック」があったこともあり、西側諸国はみんな理系教育に力を入れろ、という風潮もありました。東大工学部も定員が増えましたね。

本川 達雄(もとかわ・たつお)
生物学者。1948年生。東京大学理学部生物学科卒業。東京大学助手、琉球大学助教授を経て、1991年より東京工業大学教授。生命理工学研究科所属。ナマコやウニの研究をしている。著書に『ゾウの時間 ネズミの時間』(中公新書)、『生物学的文明論』(新潮新書)、『「長生き」が地球を滅ぼす』(文芸社文庫)、『サンゴとサンゴ礁のはなし』(中公新書)、『ナマコガイドブック』(共著、阪急コミュニケーションズ)、『ウニ学』(東海大学出版会)など。歌う生物学者としても知られ、CDや、CD付き受験参考書『歌う生物学 必修編』(阪急コミュニケーションズ)もある。ホームページはこちら
(写真:大槻 純一、以下同)

本川:算数ができるやつはみんな工学部へ行く。算数がそれほどでもないと商学部か法学部へ行く。つまりどのみち、みんなすぐに金もうけにつながる学部に行こうとしていたわけです。もっともっとたくさんものを作って豊かになろうとしていた。60年代半ばは、そんな時代でした。

 ところが私は、みんなと同じことをする気にはなれなかったんですね。もうここまで豊かになったんだから、1人ぐらい役に立つことをやらない人間がいたっていいじゃないか。

 そう考えると、大学で行く学部は決まってきます。理学部か文学部。どちらも役に立ちません。

池上:なぜ文学部じゃなかったんですか?

本川:文学部といえば文士。「文士は自己破滅型じゃないといけない」という思い込みがありました。だから文学部はやめておこう。破滅願望、別になかったですから(笑)。

 で、理学部に進むことにしました。理学部で、金儲けにつながらない真理を追究するなんていいなあ、と思ったわけです。どういうわけか清貧の修行僧にあこがれるところもありましたから、比叡山に登る気分で、理学部に決めましたね。

 ただ、理学部のどの学科にするかが思案のしどころでした。

自分も世界も両方知りたかった

池上:理学部には、生物学だけじゃなくて、数学も物理学も化学もありますよね。

本川:若いときって、誰でも「自分とは何か」とか、「真理とは何か」とか、根本的なことを知りたいと思いますよね。そして自分にこだわる人は文学部へ行き、自然の真理が知りたい人は理学部に行く。

コメント3件コメント/レビュー

ゾウの時間ネズミの時間以来、本川先生には関心を持っております。今回の記事も大変witに富んで面白かったです。やっぱり本川先生は原発反対ですか。(2012/09/06)

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「優等生が陥る「科学のワナ」」の著者

池上 彰

池上 彰(いけがみ・あきら)

ジャーナリスト

1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。報道局主幹を経て、2005年3月よりフリージャーナリストとして活躍中。2012年4月から東京工業大学で東工大生に「教養」を教えている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ゾウの時間ネズミの時間以来、本川先生には関心を持っております。今回の記事も大変witに富んで面白かったです。やっぱり本川先生は原発反対ですか。(2012/09/06)

科学には価値がない。役に立つ科学はいっぱいあるわけですから、正確には「科学には価値観が必要がない。」でしょう。かなり前から構成主義という立場があって科学もその科学者の集団社会のでっち上げで真理ではないという立場があります。古典物理学が真理だと思っていたら相対性理論が出て来た。今はもっとその先があるらしいですね。文系でも心理学という科学があって、色々でっち上げを続けて喜んでいます。要はその時代にある現象群を整合的に説明できればよいのでしょう。その結果が役に立つかどうかはいわば副産物で科学の目的ではない。ギリシャ古典のようにいわば知的な遊びである。だから人間の生き方を決めるものではない。そこでオーム真理教が生まれる余地もある。でも生き方はもっと人間のでっち上げでその社会にあったものがよいとされる。ガリレオは地動説を唱えたけれど、その社会で認められずに死んでしまった。さてこれから科学のお話なのか、人間社会の話のなか楽しみにしています。(2012/09/06)

経済優先消費文化のなれの果てが、今のモノ余りで、デフレを起こしているのだ。できうることなら、世界中が、リカバリーして、いらないものをクリーンアップしたら、本当に必要なものが見えてくるだろう。次回を読むのを楽しみにしています。+(2012/09/06)

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