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「科学には価値がない。生き物には意味がある」

東京工業大学本川達雄教授×池上 彰 第3回

2012年9月13日(木)

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自然科学は「理由」を問わない

池上前回の最後に本川先生はおっしゃいました。「科学には価値がない」と。その真意はいかに?

本川:科学とは、「メカニズム」を研究する学問です。「こういう仕組みで、こうなっているのか」というメカニズムを解明するのが科学です。

池上:たしかにその通りです。でも、それではなぜ「価値がない」と?

本川 達雄(もとかわ・たつお)
生物学者。1948年生。東京大学理学部生物学科卒業。東京大学助手、琉球大学助教授を経て、1991年より東京工業大学教授。生命理工学研究科所属。ナマコやウニの研究をしている。著書に『ゾウの時間ネズミの時間』(中公新書)、『生物学的文明論』(新潮新書)、『「長生き」が地球を滅ぼす』(文芸社文庫)、『サンゴとサンゴ礁のはなし』(中公新書)、『ナマコガイドブック』(共著、阪急コミュニケーションズ)、『ウニ学』(東海大学出版会)など。歌う生物学者としても知られ、CDや、CD付き受験参考書『歌う生物学 必修編』(阪急コミュニケーションズ)もある。ホームページはこちら
(写真:大槻 純一、以下同)

本川:科学が問わないものがあるからです。それは、「なぜ、そうなっているのだろう?」「なぜ、そんなものがあるのだろう、そんなものがあると、どうしていいんだろう」ということです。

 つまりものごとの「存在の意味や価値を問わない」んですね。

 最近も「ヒッグス粒子」がやっぱり存在するかも知れないなんていう話題が出ていますね。「ヒッグス粒子があるからこうなんだ」というメカニズムの証明は論理的に可能です。しかし、「なぜヒッグス粒子のようなものがあるのか」という存在そのものの意味や価値については、説明のしようがありません。

池上:なるほど、わかりました。「科学という学問に価値がない」のではなく、「科学の方法論は、研究対象の『価値』を問わない」ということですね。たしかに、科学で、分子や原子や物理の法則がなぜこの世にあるんだ、と問うたら、それはもう科学ではなくなってしまいます。

本川:木からリンゴが落ちる。「なぜ落ちるの?」と問うても、「なぜか」は、わからない。「重力があるからだよ」と答えても、では、「なぜ重力があるの?」と問われたら…、そう繰り返していけば、結局、答えはないんです。

池上:法則は、なぜリンゴが落ちるのかを教えてくれているわけではなくて、リンゴはこのルールに沿って落ちている、と説明しているだけなんですね。

本川:そうです。そしてそのルール=法則も、現象を観測してあとから人間が「発見」しただけのものです。別にニュートンがいなくても、法則が見つからなかったとしても、リンゴは落ちます。つまり、重力の存在に、人間が意味づけすることはできないわけです。

 あらゆる存在に意味付けをする仕事を負っているのは科学ではありません。宗教です。

 キリスト教では、すべてのものは神によってつくられたことになっています。神は愛であり、被造物にはすべて神の愛が宿っている。だから、その内在している愛の力で互いに引き合うんだ、と神の愛で重力の説明ができちゃう。存在に意味を見つけられる、価値を見いだせる。それが宗教というものです。

池上:しかし、科学の発見した万有引力の法則には「意味」がない。「説明のための論理」だけがある。

コメント8件コメント/レビュー

経済学はモデルを単純化し過ぎているため、想定外のことが起こるたびに大きなダメージを受けてしまう。それでも稼げるときに稼いで逃げようとする人々がいるからどうしようもない。中央集権的になればレスポンスが悪くなるから結果として動作が緩慢になる。これは生物も政治も同じ。環境変化に対して柔軟に対応させるには地方分権の方がいいのかもしれませんね。(2012/09/13)

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「「科学には価値がない。生き物には意味がある」」の著者

池上 彰

池上 彰(いけがみ・あきら)

ジャーナリスト

1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。報道局主幹を経て、2005年3月よりフリージャーナリストとして活躍中。2012年4月から東京工業大学で東工大生に「教養」を教えている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

経済学はモデルを単純化し過ぎているため、想定外のことが起こるたびに大きなダメージを受けてしまう。それでも稼げるときに稼いで逃げようとする人々がいるからどうしようもない。中央集権的になればレスポンスが悪くなるから結果として動作が緩慢になる。これは生物も政治も同じ。環境変化に対して柔軟に対応させるには地方分権の方がいいのかもしれませんね。(2012/09/13)

生物は自己保存的に出来ている。人間も生きるように出来ている。それが価値の意味でしょう。人間は生きることに意味を失ったら、死んでしまう得意な動物です。人間の感情は自己保存を快としそれに矛盾するものを不快とします。かなり狂っている人もいますが。生物学が他の科学と違うのは、人間が生物だからでしょう。生物を法則形成の対象ととらえてしまえば、価値は必要がありませんが、個が生きることを認めるためには価値がどうしても必要です。その答えは宗教か哲学でしょうが・・・(2012/09/13)

大変感じる事の多いインタビューでした。ディベートの手法の一つに「相手が答えづらい質問をする」と言うのがあります。それならば、ディベートでのこの手法は、科学者をやっつけるに、うってつけの手法だ、と意地悪く思いました。いや、そうではなくて、人を言い負かしている人を見て「賢い人だな。」と感じることの間違いに気が付きました。「意味を問う事が出来るのが生物学の特徴」という事では、宗教の習慣に意味がある事に思い当たりました。例えば、インドの宗教では牛を神様として、身近に置き大切にするそうですが、これは、人間より体温の高い大型哺乳類を身近に置く事により、マラリアなどの病気を媒介する蚊が好んで牛に向かうので、人間にとっては、伝染病の回避になる。と本で読んだ記憶があります。よってこの習慣を(たとえ本当は伝染病の回避だと知らなくても)宗教の教えに従順にして守る人は、病気に掛かりにくく、家族がみんな健康に育つのだそうです。こうしてこの習慣、ひいてはこの宗教が長らく繁栄し、生き残ってきた、と読んだ憶えがあります。このような宗教を初めとした人間の習慣や言語、歌や踊りなど、人から人に伝わる文化は社会科学が扱う分野かもしれませんが、リチャード・ドーキンスが「ミーム」名付け、生物と同様に複製しする遺伝子と定義している事に偶然ではない何かを感じました。(2012/09/13)

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