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亡くなられた丸谷才一さんに学んだ仕事術

特に役立った「そうそうなるほどへえ」の法則

2012年10月29日(月)

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 丸谷才一さんが亡くなった。作家であり、批評家であり、英文学者であった丸谷さん。お書きになったものが大好きで、私にとっては、本が出れば無条件に買って読む、数少ない「追いかけ」対象の方だった。ご冥福をお祈りしたい。

 私自身、文学部、それもアメリカ文学の専攻だったので、(あまり勉強はしなかったけれど)本来ならば、ジョイスやグリーンといった英文学に関わる論考や、詩歌も含めた日本文学についてお書きになったもの。あるいは、日英両国文学の伝統を踏まえたうえで、独自の世界をお創りになった小説。これらが、「追いかけ」対象の最たるものであるべきなのだろう。

 だが、本当のところ、もっとも好きで、かつ大きな影響を受けたのが、どちらかと言えばやわらかめの随筆の数々だ。

 「好き」の部分は、語るときりがないし、個人的な趣味にも左右されるだろうから、少し置いておく。今回は、丸谷さんの随筆から、コンサルタントである私が仕事上どういう影響を受けたか、についてだけ、少しご紹介することにしたい。

丸谷さん自身が示された読書の3つの効用

 丸谷さんご自身が、ご著書『思考のレッスン』(文春文庫)の中で書いておられるところによれば、読書には3つの効用があるという。

 第1が、情報を得られる、ということ。
 第2は、考え方を学べる、ということ。
 そして第3に、書き方を学べる、ということ。

 丸谷さんのご本も、随筆に至るまで、実際にこの3つの効用を提供してくれるあたりが面白い。

 第1の「情報」について。

 丸谷さんの随筆は、いつも該博な知識に裏打ちされた蘊蓄に富んでいて、誰かに話したくなるようなネタが満載だ。新たに知って、面白がれるような情報が必ず入っている。しかも、自分を少し突き放したような、まさに英国的なユーモアの感覚が底流にあるので、必要以上にペダンチック(ひけらかし)になって、嫌味な知的エリート臭をさせたりすることが決してない。

 試しに、手元にある『青い雨傘』(文春文庫)を開いてみると、「尾崎秀実と阿部定」という一項がある。ゾルゲ事件の尾崎秀実(ほつみ)と例の阿部定さんですね。

 この中で、竹内金太郎という弁護士が、両方の事件の弁護人を務めたという話が紹介され、竹内弁護士の尾崎弁護文の漢文くずしがいかに名文か、というあたりが詳しく示される。そのうえで、阿部定事件の際の弁護文が残っていたら、「きつと頼山陽の『壇ノ浦夜合戦記』にも劣らぬ名品」だったに違いない、という落ちで稿を終えている。

 なお、文藝春秋版の随筆集は、「オール読物」誌への連載をまとめたものなので、この種のネタが時々出てくるが、随筆の大部分は、ここまで軟らかいものではありません。念のため。

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「亡くなられた丸谷才一さんに学んだ仕事術」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCGシニア・パートナー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経て現在に至る。事業戦略、グループ経営、M&Aなどの戦略策定・実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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