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「悪いのは自分……」 部下が上司の“奴隷”と化す瞬間

職場の問題を悪化させる周囲の「傍観者」効果

2012年11月20日(火)

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 「すべての社員が、家に帰れば自慢の娘であり、息子であり、尊敬されるべきお父さんであり、お母さんだ。そんな人たちを職場のハラスメントなんかでうつに至らしめたり、苦しめたりしていいわけがないだろう」

 これは厚生労働省が設置した「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」のワーキンググループが今年の初めに提出した報告書の最後に書かれていた言葉である(報告書の詳細は、本コラムの記事「年下上司にパワハラした50代男性の“悔恨”と会社の“不作為”」でも取り上げているので、関心のある方はぜひご覧ください)。

 何度この言葉を見ても、「その通り」だと思うし、重たい言葉だと感じてしまう。

 でも、もしパワハラを受けている本人が、本当は苦しいのに、それを苦しみだと認知できない心の複雑な動きがあるとしたならば……。引き返すことのできない、最悪の事態に陥ってしまう可能性がある。

 「僕、パワハラに遭っていたんです。でも、渦中にいる時って、そうは思えないんです。変な例えかもしれませんが、ドメスティック・バイオレンスを受ける人の気持ちが分かるような気がしました」

 これは先日にお会いした男性がこぼした一言である。

 「転職のことで相談に乗ってほしい」と、知人経由で頼まれ、あれこれと話すうちにこう打ち明けられたのだ。

 これまでにもパワハラ問題については、何回も取り上げてきた。だが、彼の話を聞いて、少しばかり反省するとともに、改めてパワハラ問題の難しさを痛感した。

 パワハラが単なる言葉の問題ではなく、ココロの問題であるが故に生じる、「パワハラがパワハラでなくなる人間の心理の複雑さ」への着眼が欠けていたのだ。

 厚労省によれば、都道府県労働局に寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は、2002年度の約6600件から、2010年度には約3万9400件と急速に増加。日常の様々な法的トラブルの解決を支援する日本司法支援センター(法テラス)のコールセンターには、パワハラに関する相談が、今年4~7月だけで1400件以上寄せられ、昨年度1年間の3230件を上回るペースとなっている。また、ひどい嫌がらせ・いじめ・暴行などで労災の認定を受けた件数は昨年度に40件、そのうち自殺が3件あった。

 パワハラはいつ何時、誰もが加害者にも被害者にもなり得る極めて難しくもあり、微妙な問題である。

 そこで今回は、「パワハラの難しさ」について、改めて考えてみようと思う。

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「河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学」のバックナンバー

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「「悪いのは自分……」 部下が上司の“奴隷”と化す瞬間」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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