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筒井康隆にノーベル文学賞を!

日本に文学賞も平和賞も来ない理由

2012年12月28日(金)

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 年末年始にかけていくつかの雑誌から2013年に活躍するであろう日本人を挙げてくれ、という取材がありました。中には「これから活躍しそうな音楽家を」というものもあり「私は評論家ではなく、自分で音楽をしますので」とお断りしたものもありました。こういうところで評者然として何か言うほうが世間は渡りやすいのかもしれませんが、自分の本業についてはそういうことは生涯、一切しませんので、この段はご勘弁下さい。

 数年前、この連載でノーベル賞の話を書き、それがスピード出版されて本が出ているために、国内はもとより、不思議なことに海外からも、関連で話を聞きたいと言うご連絡がありますが、これも音楽の仕事と絡むものはお受けして、それ以外は極力お断りしています。というのも、個別の賞取り予想の類は、実はしても仕方がない背景があり、とくにノーベル文学賞、平和賞についてはどうにもならん理由が明確なので、そういう部分だけをまとめて、記してみたいと思います。

「日本語読者」以外には存在しない日本文学

 日本にノーベル文学賞はなかなか来ないと思います。理由は、国際的な読者を念頭に作家活動をしている日本人作家が非常に少ないからです。逆にいえば、著書がコンスタントに英語でも出、国際的に読者を獲得すれば、それだけで日本人作家でノーベル賞候補と言われる人は激増するでしょう。色気があるならさらに、スウェーデン語版を出せばいい。『その気十分』と周りも判断し、出版関係者にプロジェクトチームが出来れば、ほっといてもそういうキャンペーンが張られ、それが販売数を押し上げますから、いい広告になります。

 ノーベル文学賞というと村上春樹の名がすぐに上がりますが、それは英訳のシステムが完全に出来ていて、きちんとグローバル・ビジネスが回っている、日本人としては数少ない作家だというのが主要な理由と思います。

 アルフレッド・ノーベルが文学賞を設けた大きな動機は、激動の20世紀を迎える直前、ダイナマイトという大量破壊兵器の発明で財を成したノーベルが、今後人類社会がさまざまな問題を抱えるであろうことがわかっている中で、私たち地球上の住人が目指すべき共通の目標、あるべきヴィジョンを見せる「リテラチャー」を幅広く顕彰してゆこう、という動機が強いと思います。ノーベル文学賞受賞者のラインナップを見るなら、哲学者や政治家の名前も並んでいるのに気がつくでしょう。ウィンストン・チャーチルの「第二次世界大戦回顧録」が「文学作品」として優れているかどうか、をノーベル賞が問うた訳ではない。それはこのような大きな戦争と惨禍を生み出してしまった人類が、誤りを繰り返すことなく、立ち返って見当すべき貴重な資料としての著書とともに、チャーチルと言う人を顕彰したと見るべきでしょう。日本ではたまたま川端、大江と小説家だけが受賞していますが、ノーベル賞はインドのタゴールを筆頭に多数の詩人も受賞しています。

 翻って、いま日本語で創作する文学者で、日本語を読まない人に向けて何かを発信できる人が、どれくらいいるだろうか・・・それは、その作家ひとりの問題ではなく、実は国際的に読者を増やし、考え方の輪を広げて行こう、というマネジメント、編集・出版のスタッフを含む、大きな動きとして、機能していない、というのが正確なところだと思います。

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