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勝つのは決して体罰のおかげではない

日本と同様の体罰事件への、米国に見る真摯な対応

2013年2月15日(金)

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 柔道の女子選手15人が全日本女子代表前監督の暴力行為を告発した問題が、日本スポーツ界を揺るがす大問題に発展しています。国際柔道連盟会長から「(暴力行為は)嘉納治五郎師範が説いた精神と理念では決してない」との批判を受けるなど、日本の“お家芸”としての柔道の面目はつぶれ、品格は地に落ちた形です。

 全日本柔道連盟(全柔連)によれば、2010年8月から12年2月までの間に、前監督による5件の暴力行為が確認されており、昨年9月下旬には同監督の暴力行為について、女子選手1人が全柔連に告発しています。今回の(2度目の)告発では、15人もの選手が日本オリンピック委員会(JOC)に直接告発していることから、選手の全柔連に対する不信感が透けて見えます。

 それにもかかわらず、JOCは再調査を全柔連に命じました。さらに、全柔連は同監督らへの聞き取り調査の結果、告発の内容が「事実に近い」と判断しましたが、「監督が(選手への暴力を)しないと言っている。その言葉を信じている」として続投を決めました(監督は倫理推進部会で文書による戒告処分を受けた)。しかしその2日後には、監督からの進退伺いを全柔連が受理し、一転して辞任が決まります。

 実は昨年米国でも、今回の事件と極めて似た代表チーム監督による暴力問題が起こりました。米国の冬季スポーツの“お家芸”とも言えるスピードスケート界で起こったその不祥事は、その構図が極めて今回の日本の女子柔道事件と似ています。しかし、対応は日米で全く違ったものになりました。

 今回のコラムでは、似通った日米の代表監督による暴行事件を比較することで、日米のスポーツ界の対応の違いや、それを生み出した背景について整理・解説してみようと思います。

米国の“お家芸”で起こった暴力事件

 昨年8月末、5人のオリンピックメダリストを含む19人のスピードスケート(ショートトラック)の選手が、肉体的・精神的虐待を受けたとして代表チーム監督を米スピードスケート連盟(USS)および米オリンピック委員会(USOC)に告発しました(うち2選手は、警察に被害届も出している)。

 スピードスケートと言えば、米国では冬のスポーツの“お家芸”で、冬季五輪で最も多くのメダルを米国にもたらしている競技です。その意味では、日本の柔道にとても近い存在と言えます。

 告発状によると、代表監督は選手を壁にたたきつけ、繰り返し殴打し、ボトルや椅子を投げつけ、あるいは女性選手には「デブ」「気持ち悪い」などの暴言を吐いたとされます。告発した選手たちは、同コーチの下では2度と練習を行わないとボイコット宣言し、個別にコーチを雇って独自に練習を行っていたそうです。

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「勝つのは決して体罰のおかげではない」の著者

鈴木 友也

鈴木 友也(すずき・ともや)

トランスインサイト代表

ニューヨークに拠点を置くスポーツマーケティング会社、「トランスインサイト」代表。一橋大学法学部卒、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)出身。スポーツ経営学修士。中央大学非常勤講師

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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