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MITが「学部では最先端なんて教えない」理由

米国トップ大学の教養教育事情 MIT編その1

2013年3月7日(木)

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池上 彰(いけがみ・あきら)
ジャーナリスト。1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。社会部記者として経験を積んだ後、報道局記者主幹に。94年4月から11年間「週刊こどもニュース」のお父さん役として、様々なニュースを解説して人気に。2005年3月NHKを退局、フリージャーナリストとして、テレビ、新聞、雑誌、書籍など幅広いメディアで活躍中。2012年4月より、東京工業大学大リベラルアーツセンター教授として東工大生に「教養」を教えます。主な著書に『伝える力』(PHPビジネス新書)、『知らないと恥をかく世界の大問題』(角川SSC新書)、『そうだったのか! 現代史』(集英社)など多数。(写真:大槻 純一、以下同)

池上:東京工業大学では、理系の学生たち向けの教養教育を充実させるために、リベラルアーツセンターをつくりました。私は、このリベラルアーツセンターに招かれ、2012年4月から東工大で日本や世界の現代史などの講義を受け持っています。

 リベラルアーツセンターには、私以外に2人の専任教授がいます。ひとりは、哲学を専門とする、同センター長の桑子敏雄先生。そしてもうおひとりが、文化人類学者の上田紀行先生です(この対談の後、新たにひとり加わりました。現代アート担当の伊藤亜紗准教授です)。

上田:日本の大学は、この20年ほどの間に、どんどん専門教育偏重の方向に流れていき、教養科目を削っていきました。

池上:こうした実学志向は、「日本の大学は、社会に出ても直接役に立たない教養ばかりを教えていて、教育機関として役にたっていないのではないか」という、大学批判を受けたものでしたね。

上田:ところが、こうした実学志向が、日本の大学、とりわけ東工大のような「理系専門」の学校から、「教養」を奪ってしまった。教養は、役に立たない机上の空論どころか、人間が生きていく上で、むしろ欠かせない知の土台です。

 そこで、東工大では、教養=リベラルアーツを徹底的に教える、リベラルアーツセンターをつくったわけです。

池上:とはいっても、未だに世間では、「日本の大学は象牙の塔、実学志向が足りない」という声が大きいですね。

上田:大企業のトップの「大学は即戦力になる学生を育てろ」という批判が今でも新聞に載ったりします。

池上:そんなとき、日本の大学が必ず比較されるのが、アメリカの大学です。世界の大学ランキングでアメリカの大学は常に上位を占めてきました。

 では、アメリカの大学は、「リベラルアーツ=教養」をどうとらえ、どう教えているのか? 日本の大学と何が違うのか?

 2012年秋、私は上田先生と、アシスタントリサーチャーの3人で、アメリカ東海岸の大学を視察してきました。

MIT、ハーバード、ウェルズリー・カレッジを取材

上田:訪れたのは3校。世界の理系の雄、マサチューセッツ工科大学(MIT)、世界一の大学と称されるハーバード大学、そしてヒラリー・クリントンや米国初の女性国務長官を務めたマデリーン・オルブライトなど多くの女性著名人を輩出し、米国の大学のリベラルアーツ教育ランキングでは常にベスト5に入るといわれる、米国トップクラスの女子大、ウェルズリー・カレッジです。

池上:1日1大学ずつ、回ってきました。3日間で、大学関係者十数人に会ったんじゃないでしょうか。食事をする間もないくらいのタイトなスケジュールで、3大学の教養教育関係者に徹底インタビューを行いました。

 なぜこの3校を選んだのかといえば、まずMITは、東工大とよく似ている、理工系専門の大学だからです。ハーバードは世界トップの総合大学ですから、ここでのリベラルアーツの実態も見たい。さらに、ウェルズリーはリベラルアーツそのものを4年間教える究極の教養教育を行っている大学です。

上田:それぞれで、リベラルアーツ教育がどのように行われて、どんな工夫をしているのか。その極意を盗んで、東工大の教養改革に活かそう、というわけです(笑)。で、池上さん、いかがでしたか?

池上:結論から申し上げます。アメリカの大学がこれほどまでにリベラルアーツ教育に力を入れているとは、想像をはるかに超えていました。

 しかもリベラルアーツの範囲がものすごく広い。社会科学や文学や哲学はもちろん、美術や音楽に至るまでをカバーしている。総合大学のハーバードや教養教育に徹しているウェルズリーだけでなく、理工系の専門大学、というイメージの強いMITまでもがそうだった、というのにとても感動しましたね。

コメント8件コメント/レビュー

ここのコメントは的外れが目立つ。やはり自体は深刻だ。日本は「教養主義」を排したおかげで、地方や中堅以下では教育者も保護者も学生もすべて「教養=無駄」の価値観に洗脳されている。何時の時代もそうだが、最後まで「腐敗する」のは非エリート層であって、エリート層から「腐敗からの脱却」が進む。簡単な例を上げれば、理系大学入試2次試験で「古文」を課しているのは東大だけである。この事実すら今の大人はまともに知らない。しかもここでの「教養」とは「知識偏重」ではない。かつての日本は「知識偏重=教養」となり、自滅した。「マニュアル大好き、丸暗記大好き」教員、保護者、学生の大行進こそ、「今そこにある危機」である。今の日本の深刻さが全くわかっていない。(2013/03/08)

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「MITが「学部では最先端なんて教えない」理由」の著者

池上 彰

池上 彰(いけがみ・あきら)

ジャーナリスト

1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。報道局主幹を経て、2005年3月よりフリージャーナリストとして活躍中。2012年4月から東京工業大学で東工大生に「教養」を教えている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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ここのコメントは的外れが目立つ。やはり自体は深刻だ。日本は「教養主義」を排したおかげで、地方や中堅以下では教育者も保護者も学生もすべて「教養=無駄」の価値観に洗脳されている。何時の時代もそうだが、最後まで「腐敗する」のは非エリート層であって、エリート層から「腐敗からの脱却」が進む。簡単な例を上げれば、理系大学入試2次試験で「古文」を課しているのは東大だけである。この事実すら今の大人はまともに知らない。しかもここでの「教養」とは「知識偏重」ではない。かつての日本は「知識偏重=教養」となり、自滅した。「マニュアル大好き、丸暗記大好き」教員、保護者、学生の大行進こそ、「今そこにある危機」である。今の日本の深刻さが全くわかっていない。(2013/03/08)

下から 4 番目のコメントの人、大学のゼミに一度顔を出して見ればわかります。基礎を放置し「今っぽい」応用風のテーマを扱うことを学問と思い込んで、浅薄な論文を大量に生み出しているのが日本の大学の現実です。情報理論を知らないで通信品質を語る者、型システムの理解なしに思いつき言語を作る者、哲学を知らずに法律論を語る者、ひどいものです。■自分は最初法律を学びその後 IT の世界に進んだのでその両方を見てきましたが、ともに基礎を軽視し、楽して派手な応用を求める姿は共通でした。たとえば刑法の基礎理論の背景に、新カント派哲学とヘーゲル派哲学の対立があるなんてこと、ゼミの誰も知りませんでした。そもそも哲学自体をまったく勉強していない。その大学は法学部の偏差値が全国トップ 5 に入る有名大学ですが、それでもその有様です。基礎をおろそかにしているので理論は矛盾・欠陥だらけとなりますが、それを指摘すると「東大のxx先生もそう言っている。」と権威主義を持ち出し回避するだけ。■真剣に物事を考えようとしない。そういう人たちがしっかりとした「もの」を作れるわけがありません。ここに書かれている内容は自分も普段から意識していることであり、非常に共感しました。(2013/03/08)

学部では最先端を教えることが一般的という前提の話しなのでしょうかね?世界の大学ランキングに出るような日本の大学でも学部レベルでは,卒業研究で教員の最先端の研究の一部に触れさせ,それを題材に問題解決や論理的思考,文章作成などのトレーニングをしている程度ではないですか.これは最先端を教えるというよりも,それまで疎かにされてきたプレゼンなどを含めた論理的に議論し意見を適切に伝える能力を伸ばすための基礎を学習させているように思えますが.(2013/03/08)

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三品 和広 神戸大学教授