• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

東工大生が、ボキャ貧・コミュ障から脱出するには?

米国トップ大学の教養教育事情 総括&東工大編

2013年4月4日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

(前回から読む

池上:これまで、2012年秋に上田先生と私とで見学してきたMIT、ウェルズリー、そしてハーバードのリベラルアーツ教育の実態を紹介してきました。

 それを踏まえた上で、日本の大学の教養教育、もっと具体的に言うと、私たちが在籍する東京工業大学のリベラルアーツのあり方について、改めて上田先生と考えたいと思います。

上田:アメリカで私たちが見学してきた3校に比べると、東工大は先生も設備も学生もまだまだ、ということばかりを書き連ねてきたような気がします。でも、むしろ今回の見学を通じて、東工大生の潜在能力の高さを非常に意識するようになりました。

 実は昨年、東工大生の潜在能力が開花する瞬間を私は見てしまったのです。

池上:そうでしたね。

上田:実は今期(2012年度)から、東工大のリベラルアーツセンターでは、タレントの「パックンマックン」のパックンを非常勤講師に招いて授業をやってもらったのです。

池上:パトリック・ハーランさんですね。とても忙しいので年間15回のフルサイズの講義は無理だけど、ということで計8回の講義をお願いしたんですよね。年間1単位になる授業です。

上田:まず感動したのが、芸能人のパックンがものすごくやる気で授業に乗り込んできたことです。「これまでPowerPointなんて使ったこと、なかったよ~」なんて言いながら、最初の授業のPowerPoint資料も、BGM入りの気合いの入った代物で、異様に充実していた。

 パックンのお父さんは軍人なんですね。それで、最初の自己紹介のときには、まずミサイルの絵を出して、ある基地になんとかという軍人がいましたと。そしてそこにこの、ジャジャジャジャーン、何とかジュニアが生まれました、と言って、赤ちゃんの写真。それが私です!と。

池上:パックンはハーバード大学の出身です。おそらく大学時代に相当プレゼンテーションの訓練を受けているんだと思います。

上田:彼の授業はまさにハーバード仕込みでした。授業に対する熱意も、学生たちに対する課題もすごく多いんですよね。毎回のように小論文を書かせる。そして学生たちに次々とプレゼンをさせる。しかも誰かがプレゼンした内容を受けて、別の学生を指名して「今のプレゼンの中身を応用したら、何ができる?発表して!」とその場で、さらに複雑なプレゼンをさせる。学生たちは、心身ともフル活用して授業に取り組まないと振り落とされてしまう。

池上:パックンとはテレビの仕事で前からつきあいがあり、ぜひ東工大の授業に呼びたいな、と思って、私が呼んだのですが、あそこまでの才があるとは……。アメリカで見てきた大学の活気ある授業が東工大の教室に再現されたようでした。ちょっと感激してしまいましたね。

いいスピーチは「エートス・パッション・ロゴス」

上田:それから、パックンのすごいところは、「どうすれば人の心に訴える話し方ができるようになるのか」を、きわめて具体的に説明して、学生たちに教えることができるという点です。やはりプレゼンテーションについて、実践と論理両方から鍛えられてきたからなんでしょうね。日本人で話が上手な人というのは、案外「どうすればうまく話せるか」についてはきっちり説明ができなかったりするものですが……。

上田 紀行(うえだ・のりゆき)
文化人類学者、医学博士。1958年東京生まれ。東京大学大学院博士課程修了。愛媛大学助教授(93~96年)などを経て、2012年2月より東京工業大学リベラルアーツセンター教授。2005年の渡米時にはスタンフォード大学仏教学研究所フェローとして、「今の仏教は現代的問いに答え得るか」と題した講義(全20回)を行った。講義にディスカッションやワークショップ形式を取り入れるなどの試みを行っており、学生による授業評価が全学1200人の教員中第1位となり、「東工大教育賞・最優秀賞」(ベスト・ティーチャー・アワード)を学長より授与された。著書に、2006年の大学入試で出典数1位となった『生きる意味』(岩波新書)、『目覚めよ仏教!-ダライ・ラマとの対話』『がんばれ仏教!』(NHKブックス)など。(写真:大槻 純一、以下同)

池上:パックン、なんと説明したんですか?

上田:パックンはこう言いました。

「本当にいいスピーチには、3つの要素が欠かせません。1つがエートス。もう1つがパッション。そしてもう1つがロゴスです。どれが欠けてもダメなんです」

池上:なるほど! その通りです。

上田:まず、エートス。本質、ですね。ここがずれていたら、そもそもスピーチにならない。まず話すべき対象のエートスをきっちり自分自身で理解する。

 でも、それだけじゃダメ。なぜあなたがこの話をするのか、自分自身のパッション、情熱であり感情、ですね。それが盛り込まれていない話は、人を引きつけない。だから、必ず自分の体験を通じた感動をちゃんと盛り込む。

 そして、ロゴス(論理)。いくらパッション=感情を盛り込んでも、話そのものに論理性を欠いていれば、その話はその場限りの効用しかありません。だから必ず何らかの客観的な事実やデータを添えて、パッションで表現した部分に呼応するかたちで「データ的に見ても、論理的にみても、こうなのです」とダメを押す。すると話の説得力が格段に増すわけです。

コメント0

「池上彰の「学問のススメ」」のバックナンバー

一覧

「東工大生が、ボキャ貧・コミュ障から脱出するには?」の著者

池上 彰

池上 彰(いけがみ・あきら)

ジャーナリスト

1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。報道局主幹を経て、2005年3月よりフリージャーナリストとして活躍中。2012年4月から東京工業大学で東工大生に「教養」を教えている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

機械を売るんじゃなくて、電気が欲しい方に電気が起きる装置をソフトも含めて売るビジネスをしていこうと。

田中 孝雄 三井造船社長