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インフレ目標政策は万能特効薬か?

ニュージーランド、カナダ、英国、スウェーデンの経験

2013年4月5日(金)

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 日本銀行は本年1月、消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率2%を物価安定の目標とするインフレ目標政策を導入した。これは、アナウンスメント効果を通じて、円安の進展など金融市場に一定の影響を与えたとみられるが、その運営の実際については、依然知られていないことが多いと思われる。

 そこで本稿では、インフレ目標政策を比較的早い段階から導入している主要4カ国(ニュージーランド、カナダ、英国、スウェーデン)の例をとって、主にその導入からリーマン・ショックまでの約20年の歴史を振り返り、その政策運営の変貌を概観する(図表1)。

【図表1】4カ国におけるインフレ目標政策の枠組み(2012年3月時点)
ニュージーランド カナダ 英国 スウェーデン
導入時期 1988年4月 1991年2月 1992年10月 1993年1月
目標値・幅 1~3% 中心値を2%1~3%のレンジ 2% 2%
±1%を許容
物価指数 CPI総合 CPI総合 CPI総合 CPI総合
達成期間 中期 (18~24カ月) 妥当な時間 (通常2年以内)
目標を達成できない場合 原因・予測・対処法を書面で説明
総裁罷免の可能性
明文化されていない 1~3%の範囲を超えたら財務大臣に原因と対処法を公開書簡で提出 明文化されていない

 これら4カ国の中銀は、CPI(消費者物価指数)総合の前年比を2%程度に安定化することを目標としている。政策効果が出るまでのラグ(遅れ)、実体経済にもたらす影響を考慮に入れて、4中銀は物価安定の達成期間をやや長めに設定し、足許の物価を無理に安定化するのではなく、先行きの物価を緩やかに安定化することをめざした運営をしている。

 4中銀によるインフレ目標政策の運営はこの25年間、足許の物価安定に向けての厳格な運営から、中期的な物価と実体経済の安定をめざす運営へと大きく変貌した。背景には、インフレ目標政策導入以降徐々にインフレ率が低下し、インフレ期待や長期金利が低位に安定するようになってきたことなどがある。

高インフレ率下で導入されたインフレ目標政策

 ニュージーランド、カナダ、英国、スウェーデンの4カ国は、1980年代、慢性的な高インフレ・高金利に苦しんでいた。86~90年のインフレ率(前年比)は、ニュージーランドでは9.5%に達していたほか、他の3カ国でも4.5~6.2%であった(図表2)。86~90年の長期金利(10年物)は、4カ国とも10%以上であった。

【図表2】4カ国におけるCPI総合インフレ率(%)
ニュージーランドカナダ英国スウェーデン
1986~90年 9.5 4.5 6.1 6.2
1991~95年 2.1 2.3 3.8 4.2
1996~00年 1.5 1.7 1.6 0.5
2001~07年 2.6 2.3 1.7 1.6

(注)前年比の期間平均。英国は1989年から。(資料)各国中銀ホームページ

 インフレ目標政策は、そのような環境の90年前後、インフレ期待を安定化し、インフレ率の低下を達成するために導入された。しかしインフレ目標政策導入によって、即座にインフレ期待が安定化し、長期国債に付されるリスク・プレミアムが低下したわけではない。むしろ、インフレ目標政策導入直後においては、4カ国の政府がGDP対比でみて2~7%の財政赤字を抱えていたことや、英国では中銀の法的独立性が担保されていなかったこともあって、インフレ目標政策の枠組みに対する信認は高くなかった。

 インフレ期待はインフレ目標政策導入後も高止まりし、91~95年の各国の長期金利は、わずかに低下したものの依然として8~10%の高水準にあった。政財界などからは、急速なインフレ率の低下、すなわちディスインフレの過程で景気が悪化するとの懸念から中銀への批判が起こっていたほか、市場では、インフレ目標政策は達成できないとの疑念が広がっていた。

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「インフレ目標政策は万能特効薬か?」の著者

上田 晃三

上田 晃三(うえだ・こうぞう)

早稲田大学政治経済学術院准教授

1997年、東京大学物理学部卒業、99年同修士。2006年同博士号(DPhill)。専門はマクロ経済学、応用ゲーム理論。1999年日本銀行入行、2013年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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