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徹底的に「建前」で議論せよ。しからば合意に至らん

桑子先生に入門!「社会的合意形成」 第3回

2013年5月16日(木)

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池上:河川改修のような公共事業を行っていく上で、社会的合意形成は不可欠であることが、前回までのお話で理解できました。とはいうものの、そもそも意見の合わないもの同士の間で合意を形成するのは難しい。合意形成、まず、どこから始めるのですか?

桑子:条件によってやりかたはいろいろありますが、最初に考えるべきは、話し合いの場とプロセスのデザインをどうするかということです。

桑子 敏雄(くわこ・としお)
哲学者。東京工業大学大学院教授、同リベラルアーツセンター長。博士(文学)。1951年群馬県生まれ、75年東京大学文学部哲学科卒業、同大学院人文科学研究科哲学専修課程、博士課程修了。南山大学助教授などを経て東工大へ。2012年4月よりリベラルアーツセンターを率い、東工大生の「教養」力向上に努める。著書に『西行の風景』『感性の哲学』(日本放送出版協会)、『風景のなかの環境哲学』(東京大学出版会)、『空間の履歴』(東信堂)など多数。

池上:デザインするためには?

桑子:そのためには、それぞれの事案のステークホルダー=利害関係者の分析が非常に重要になってきます。この事案に関しては、いったい誰がステークホルダーなのか。それを知る必要があります。

 次にそれぞれのステークホルダーの意見を把握する必要があります。英語でいうと、オピニオンですね。さらに重要なのは、その意見の理由、なぜそのような意見をもっているかということです。

 これは、「どういうことに関心をもっているか、どういうことを心配しているか、つまりどういうことに懸念をもっているか」ということで、「意見の理由」です。

 この意見の理由、つまり、インタレストを把握する必要があります。ダム建設に関して、海岸の改修工事に関して、どんな意見を持っているのかだけではなく、どうしてそういう意見をもっているかをしっかり知っておかねばなりません。その把握がデザインのスタートとなります。

池上:なるほど。

桑子:インタレストという言葉は「利害」と訳されることもありますが、私は「関心」とか「懸念」と訳することにします。たとえば、話し合いをするとき、あなたの利害は何ですか、とはなかなか聞けません。

池上:あまりにあけすけな聞き方になりますね。

桑子:しかし「あなたがそういう意見をもっているのは、どういうことに関心をお持ちだからですか」「どういうことを懸念されているんですか」とは聞けるわけです。

池上:たしかにそうだ。

「落としどころを探る」ことではない

桑子:「あなたがそうおっしゃるのはどういうことを懸念されているからですか」ならば聞くことができる。そうやって聞いていくことで、それぞれのステークホルダーのインタレスト、つまり意見の背後にある理由がわかってきます。

 ここでポイントとなるのは、合意形成とは、対立する「意見の調整」ではない、ということです。

池上 彰(いけがみ・あきら)
ジャーナリスト。1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。社会部記者として経験を積んだ後、報道局記者主幹に。94年4月から11年間「週刊こどもニュース」のお父さん役として、様々なニュースを解説して人気に。2005年3月NHKを退局、フリージャーナリストとして、テレビ、新聞、雑誌、書籍など幅広いメディアで活躍中。2012年4月より、東京工業大学リベラルアーツセンター教授として東工大生に「教養」を教える。主な著書に『伝える力』(PHPビジネス新書)、『知らないと恥をかく世界の大問題』(角川SSC新書)、『そうだったのか! 現代史』(集英社)など多数。

池上:え、合意形成とは、意見の調整ではない? てっきり、ダム賛成派と反対派の間に立って、お互いの意見を調整することだと思っていました。違うんですか?

桑子:違います。表面上の意見の対立を調整しようとしても、まず無理です。そう思いませんか?

池上:まあ、そうでしょうね。じゃあどうするんですか?

桑子:なぜそれぞれが賛成、反対の意見を持つに至ったのか。その意見を持った理由をちゃんと掘り下げる。そしてそれぞれの意見=インタレストの対立構造そのものを露わにした上で克服する。それが合意形成なんです。調整というと、賛成と反対の間に立って、だいたいこのくらいの感じでいかがでしょうか? という形ですよね。それではないんです。

コメント9件コメント/レビュー

一連のお話、大変興味深いです。この手法を用いて昨今話題になっている慰安婦問題の社会的合意を得ることはできないものでしょうか(切望)国際的な合意を必要とするのでハードルは高いと思いますが。(2013/05/16)

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「徹底的に「建前」で議論せよ。しからば合意に至らん」の著者

池上 彰

池上 彰(いけがみ・あきら)

ジャーナリスト

1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。報道局主幹を経て、2005年3月よりフリージャーナリストとして活躍中。2012年4月から東京工業大学で東工大生に「教養」を教えている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

一連のお話、大変興味深いです。この手法を用いて昨今話題になっている慰安婦問題の社会的合意を得ることはできないものでしょうか(切望)国際的な合意を必要とするのでハードルは高いと思いますが。(2013/05/16)

大変面白いお話でした。「建前」とかぎかっこで示されているように、実際は、(大勢の人に通用するような)理性的な意見のことでしょうか。我儘(「本音」)は個人的なので他人には通用しない、みんなに分かってもらえるような意見を言うべきですね。■これは、ちょっと科学者の世界の議論に似ています。圧倒的に明らかな証拠が見つからないうちは、どうしても意見が割れますが、理性的な意見を持ち寄ることで科学的な合意が形成されます。例えば、絶対正しいとは言えないが、現在の地球温暖化は人為起源の二酸化炭素のせいである可能性が非常に高い、というような合意です。この合意自体を完全に客観的に作ることはできませんが、理性的な議論の末に「どうやらそれしかないようだ」という「主観的」合意が出てくる。「理性的」は「客観的」とは限りませんが、多くの人が納得出来るという点で、合意形成に不可欠。■ところで、副題の文法が直って良かったです。(2013/05/16)

■「子ども、女性に聞かせるのが効果的」妙案です。 ■橋下市長の風俗肯定発言、ご自身の奥さんと娘さんに面と向かって発言できるかな? (迷亭寒月)(2013/05/16)

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三品 和広 神戸大学教授