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原発問題の合意形成が至難である理由

桑子先生に入門!「社会的合意形成」 第5回

2013年5月30日(木)

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池上 彰(いけがみ・あきら)
ジャーナリスト。1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。社会部記者として経験を積んだ後、報道局記者主幹に。94年4月から11年間「週刊こどもニュース」のお父さん役として、様々なニュースを解説して人気に。2005年3月NHKを退局、フリージャーナリストとして、テレビ、新聞、雑誌、書籍など幅広いメディアで活躍中。2012年4月より、東京工業大学リベラルアーツセンター教授として東工大生に「教養」を教える。主な著書に『伝える力』(PHPビジネス新書)、『知らないと恥をかく世界の大問題』(角川SSC新書)、『そうだったのか! 現代史』(集英社)など多数。

池上:ここまで、社会的合意形成について伺ってきましたが、どうしてもひとつお聞きしたいことが出てきます。それは、原子力発電所、原発についてです。おそらく読者の皆さんも、ここまで読んできて、社会的合意形成は原発の是非を問うときにこそ必要なのでは、と思っていらっしゃるはずです。

 原発問題について、どうやって合意形成をしていけばいいでしょうか。

桑子:実はいまとある被災地でこれから町をどうしていくかという合意形成に関わっているのですが、原発にからむ問題は難しいですよ。

池上:どんなところがですか?

桑子:私がこれまで関わってきた、たとえばダムの問題、道路の問題については、みんな意見を持っていました。その意見には賛成反対ともにちゃんとした理由がありました。その理由の来歴もありました。

池上:原発の問題ではそれがないんですか。

桑子:ない。なにせ、原発事故によって根っこの部分から全部、壊れてしまっているわけです。町によってはコミュニティそのものが崩壊している。しかも高度な科学技術がからむ話で、専門家ですら意見が割れている。一般市民が、自分がどういう意見を持っているのか、持ったらいいのかということがわからない。何かを心配しているんだけど、どう心配しているのかもわからないんです。

池上:うーん、たしかにそうですね。

桑子:わからない。意見を形成したいんだけれども、その意見形成の根拠となる科学的説明というのがどうも信用できない、何を信用していいかわからないという状態の中にいます。

原発問題は、対立の「構造」がゆらぎ続けている

池上:たとえば放射線量が体に与える影響についても、専門家によって言うことが違います。

桑子 敏雄(くわこ・としお)
哲学者。東京工業大学大学院教授、同リベラルアーツセンター長。博士(文学)。1951年群馬県生まれ、75年東京大学文学部哲学科卒業、同大学院人文科学研究科哲学専修課程、博士課程修了。南山大学助教授などを経て東工大へ。2012年4月よりリベラルアーツセンターを率い、東工大生の「教養」力向上に務める。著書に『西行の風景』『感性の哲学』(日本放送出版協会)、『風景のなかの環境哲学』(東京大学出版会)、『空間の履歴』(東信堂)など多数。

桑子:そういうった中で、自分たちがこれから生きる地域をどうしていったらいいかについて、合意を形成しなきゃいけないんです。難事業です。

池上:桑子先生のお話では、合意形成の大前提として、意見の対立構造を明らかにする必要がありましたよね(前々回参照、リンクはこちら)。

桑子:そうです。対立している明確な意見があって、コンフリクトの構造がはっきりしていれば、私も何かしら「こうしたらいいんじゃないか」と言えるんですが、それがないんです。

 もちろんさまざまな賛成や反対がある。つまりコンフリクトの構造はある。ところがそれがどんどん動いてしまう。新しいニュースや新しい状況で、構造そのものがゆらぐ。当然、人々の意見も動揺しっぱなしです。意見も、意見の理由も揺らいでしまう。

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「原発問題の合意形成が至難である理由」の著者

池上 彰

池上 彰(いけがみ・あきら)

ジャーナリスト

1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。報道局主幹を経て、2005年3月よりフリージャーナリストとして活躍中。2012年4月から東京工業大学で東工大生に「教養」を教えている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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