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「介護で失職!?」 今どきの職場の割り切れない実情

さばさばと心境を語った50代男性の言葉の重み

2013年6月4日(火)

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 今回は、「このままでいいわけがない……」ってことについて、書こうと思う。

 至極あいまいなテーマ設定なのだが、聞けば聞くほど、考えれば考えるほど、難しい問題で。これ以外の言葉が見つからなかったのである。

 なので、まずは読み進めていただければ幸いです。

 「妻が介護うつになっちゃったんです」

 2年ほど前にお会いした時、その男性(52歳)はこう話し始めた。

 「妻は元気な人で、母との関係も悪くなかった。本人も、『大丈夫。私がやるから』と言ってくれていたので、母の介護を妻に任せきりにしていたんです。ところが、妻が倒れてしまった。お恥ずかしい話ですが、妻がそこまで追い詰められていることに私は少しも気がついていなかったんです。医者からは環境を変えた方がいいと言われたので、妻は実家に戻り、私が介護をすることになりました」

 この男性が勤める会社では、積極的にワークライフバランスに取り組んでいる。それもあって、「介護と仕事の両立は大変ですけど、周りに助けてもらっているので、何とかやっています」と男性は語っていた。

 それで先日。突然その方から連絡が入った。介護状態にあったお母様が他界されたのだという。

「最後に親孝行ができてよかった」と男性は語ったが…

 「昨年、会社を辞めたんです。仕事との両立が難しい状況になりましてね。そのまま会社にいても、フリーライダーになるだけでしたし。でも、最後に親孝行できてよかった。母親とあんなに長い時間を過ごしたのは、子供の時以来。でも、かつての母とは全く違う、年老いた母。妙な気分でしたよ。いつの間にこんなに年を取ってしまったのかと。100点には程遠かったと思いますけど、自分なりにできることを精一杯やったつもりです。父親を早く亡くして、親孝行らしきことは一つもできていなかったので、こういう時間をくれた母に感謝しています」

 「今は、必死にシューカツしてます。なかなか厳しくて、思うようにはいきません。今さらですが、何かスキルを身につけた方がいいだろうと、そちらの勉強も始めました。まぁ、やるしかないですから」

 彼はどこか吹っ切れたようにそう話してくれたのである。

 正直、私は彼の話を聞いて、非常に考えさせられた。介護に理解のある会社に勤めていても、「フリーライダーになってしまうから」と、辞めざるを得ない現実。「最後に親孝行できた」と、どこかすっきりしたように語る彼の姿勢──。

 介護は、「いつ、誰の身に降りかかるか分からない問題」であるにもかかわらず、それを経験した人でないとリアルな苦しみを理解できない。それだけに、働くこと、生きること、人生で大切なこと。あれやこれやと、感情と思考回路が、かなりの勢いで乱れてしまったのだ。

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「「介護で失職!?」 今どきの職場の割り切れない実情」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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