「キャリアアップしたいって言うくせに、出世はしたくないってどういうことなんだ? 訳が分からないんだよなぁ」
「うちの部下は、キャリアアップしたいとか言って、転職していったぞ」
「つまり、会社にいたんじゃ、キャリアアップできないってことか?」
「そ、そうなんですか? 私、実は高卒だったんで、かなり頑張って管理職になったんですけど。これはキャリアアップと言わないってことですか?」
「出世っていうと、すっかりネガティブにとらえられるようになったけど、キャリアアップと何が違うんだ?」
「やっぱり、キャリアアップ=転職ってことか?」
「(全員)う~む……。分からん」
しょっぱなから、飲み屋でのやり取りのような始まり方だが、これは先日に開かれた企業の部長クラスの方たちとの会合での一コマだ。
部下との関わり方や育て方についての話になった際に、「キャリアアップ」という、今では誰もが知っている言葉が「???」ってことになったのである。
いまひとつよく分からないキャリアアップの真意
キャリアアップ──。数年前からよく耳にするようになった言葉だが、実は和製英語である。
巷には「キャリアアップのための転職の勧め」とか、「キャリアアップできる資格100選」といった本やら雑誌やらがあふれ、転職の理由にキャリアアップを挙げる人たちも少なくない。
1~2年ほど前からだろうか。30代の方たちをインタビューすると、「キャリアアップしたいので、転職を考えている」とか、「キャリアアップするには、人脈が必要なんで、今は人脈づくりにいそしんでいます」なんて話を聞くことが多くなった。
今まで「キャリアアップね~」などと突っかかりながらも、何となくスルーしていたけれど、確かに冒頭の部長さんたちが首を傾げたように、キャリアアップが何を意味するのかいまひとつ釈然としない。
将来が不確実で、これまで安泰と信じられてきたものの賞味期限が切れ、いつ「もう、い~らない!」とポイされてしまうか分からない世の中だ。
自分でキャリアを磨いていくことは大切かつ必要なこと。だが、だからといって、転職が必要なんてことはないだろうし、そもそも「キャリアアップ」を願う人たちは、何をもってキャリアアップと考えているのだろうか?
キャリアアップという言葉の意味さえ、いまひとつ分からなかったりもする。そこで、今回は、「キャリアアップの謎」について、考えてみようと思う。
この前、ドイツに1か月ほど、行ってきました。とても能力がある人がいましたが、More salary means more responsibilities.と言って、出世しようとしていませんでした。そんなドイツ人はたくさんいるようです。でも、一方、野心満々な人もいました。どちらがよいとは言えません。でも、片方だけでは、組織は成立しません。ひとつだけ言えることは、両方の人たちは、両方とも、それぞれの道でものすごく努力しているということです。腕を磨き続けないと価値を失う点については、何の変わりもないということでしょう。No easy way. Life is tough!ですね。(2013/07/02)