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「高齢化社会だから医療費が増える」のウソ

医療保険制度改革で語られない本当の論点とは

2013年8月19日(月)

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 なお、医療費増加の説明の1つとして、「医療の高度化」がしばしば指摘されるが、これは結果であって原因ではない。画期的な新薬や治療技術が開発されたところで、需要がなければ使用されない。高くついても健康でいたいという人々の願望がまずあってこそ、高価な医療が開発され利用されるのである。伝染病のような安価に直せる疾病が克服され寿命が延びても社会がそこで満ち足りるわけではなく、さらなる健康と長寿を求め、がんや慢性疾患のような社会的費用の大きな疾患への挑戦が新たに始まるというのも同様の摂理である。以上、医療需要についてまとめれば、「医療費はこれからも経済成長率を上回るペースで上がっていく」と考えられる。

保険と再分配を区別しよう

 次に保険と再分配の区別について明らかにしておきたい。説明をわかりやすくするため、3つの制度を考えてみよう。まず、1、医療費を100%窓口で支払う制度(全額自己負担)、次に2、保険料を支払って医療保険に加入できる制度(任意保険)、最後に3、国民皆保険、つまり医療保険に全員が加入し保険料は所得に応じて決まる制度(保険強制加入+再分配)の3つである。

 まず1と2の違いとなる「保険」であるが、保険はそもそも、将来の不確実性が存在するときに、複数の人間で事前にお金を出し合ってリスクに備えるというものだ。この対価を払って将来のリスクをヘッジするという定義からして保険は「助け合い」ではないことを理解しておく必要がある。海外旅行保険を助け合いだと考えて購入する人はいないだろう。

 次に3が2と違うのは、全員強制加入にして保険料を所得に応じて調節する点である。低所得者にも病気になるリスクがあるし、そもそも幼少期から重度の疾患を抱えて生涯ほとんど所得のないような人もいる。そのような人々に保険料支払いを求めるのは酷だろう。このような観点から、支払い能力に応じた負担(応能負担)という考え方が出てくる。

 ここで所得に応じて負担を調整する実際的手段としては、保険料を所得に応じて調節したり、税金や公的扶助を加減したりと様々な手法があり、日本ではこの調整の実態が非常に複雑で分かりにくい制度になっているが、ここでは「支払い能力のある人間が支払い能力のない人間の医療費を肩代わりする」という再分配の構図をおさえておけば十分である。

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「「高齢化社会だから医療費が増える」のウソ」の著者

丸山 士行

丸山 士行(まるやま・しこう)

ニューサウスウェールズ大研究員

2007年米ノースウェスタン大学経済学博士(Ph.D.)。専門は医療経済学・応用ミクロ経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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