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失業者支援策が、逆に格差を拡大する?

労働市場で、ニーズに合った求人場所を置く経済学的意味

2013年10月8日(火)

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 アベノミクスの成長戦略を支える上で、成熟産業から成長産業への速やかな労働移動が模索されている。失業をなるべく最小限に留めて、最適な雇用再配置を促そう、というわけだ。そのような中、日本でも雇用促進に向け、公共職業紹介所(いわゆるハローワーク)や民間人材ビジネスを活用した、雇用仲介によるマッチング強化に期待が集まっている。この点、ヨーロッパには労働市場改革を繰り返し、試行錯誤を蓄積してきた歴史がある。

 イギリスにおけるジョブセンター・プラスの設立や、ドイツのハルツ改革(ドイツで2000年前半からはじまったシュレーダー首相による大規模な労働市場・雇用改革で、フォルクスワーゲンの労務担当役員であったペーター・ハルツ氏を中心に行われた)が有名であるが、オランダをはじめとする他のヨーロッパ諸国でも似た試みがある。本稿では、筆者の研究チームがオランダおよびドイツで取り組んでいる研究成果を紹介しながら、公的・私的職業斡旋・仲介の果たす機能と効果について、経済学的な視点から論じてみたい。

職業斡旋・仲介の必要性は世界的コンセンサス

 経済協力開発機構(OECD)統計(2011年)によると、GDP(国内総生産)比でみた、各国政府が公共職業紹介サービスに費やした支出(オフィス維持費、人件費、業務管理費など)は、アメリカ0.04%(60億ドル)、日本0.05%(2500億円)、ドイツ0.34%(89億ユーロ)、オランダ0.41%(25億ユーロ)であった。

 これに、職業訓練や所得保障にかかわる支出を加えると、GDP比は、それぞれ、0.71%、0.62%、1.82%、2.74%にのぼる。職業斡旋・仲介にかかるこれほどまでの出費を正当化する根拠は何だろうか。最も大きな前提は、仕事を見つけるのにサポートを必要としている求職者が大勢いるということである。

 企業が求める人材と求職者の持っている特性などが異なったり、企業と求職者の互いの情報が不完全であったりするため、両者が相手を探すのに時間がかかる。これらの困難(経済学の用語で、マッチングに伴うフリクションという)を公的支援により軽減することによって、仕事が見つけやすくなるというわけだ。

 労働市場ではマッチングに伴うフリクションがそれほどに大きく、国民の厚生の損失が深刻で、だからこそ多少の支出をもってしても対策を講じるべきである、というコンセンサスが世界中で共有されているともいえる。公共職業紹介所の存在そのものが、求職、求人にともなうフリクションの大きさ・深刻さを表しているのである。

コメント2件コメント/レビュー

定年退職した時に、既に退職済みの友人から「失業保険」を貰えるという話を聞き、職安に行った。当時も5%台の失業率で職安は混んでいたが、失業者が多い時程忙しくなるという職安という業種は社会の仕組み上の皮肉だと感じた。ある意味、病院とも似ている。病院は本来患者が少ない方が社会としては好ましいのだが、最近の大病院は医師が昼休みすらまともに取れない程込み合っている。医療費の本人負担が10%の老人で溢れ返っている。処方箋を発行された時に薬局に行けば、一度に10種類以上の薬をレジ袋一杯に受け取っている人も頻繁に見かける。医療機関は患者本人の負担感が少ない老人に必要以上の薬の処方箋を発行し、「健康のため」という大義名分に隠れて売上げ増大に励んでいる。職安の方に戻ると、失業保険を受け取る為には、定期的に職安に本人が出頭して「食探しをしている」事を事務手続き上確認しているのだが、本当に就活しているかどうか等は訊ねられもしない。全く無駄な形式的な確認作業をするのにも税金が使われている。私自身は職安では一切就活をせずに、個人でつてを頼って再就職の道を探っていて、定年退職後一年半で、海外での働き口が見つかった。失業保険受給も5ヶ月程度で終わったので、年金生活に入って一年くらいの時だ。私自身は失業保険の給付は初めての経験だったが、「定期的」と言う程何回も繰り返し受給している人もいるという。制度を「悪用」しているとしか言い様が無い。失業者に対する失業保険の給付審査や求人の紹介等の仕組みは何時くらいに出来た物か知りませんが、時代の要求に合っているとはとても思えない程無駄と形式に凝り固まっていて、有効に機能しているとは思えない。職業訓練の紹介や助成も含めて、全面的に仕組みを作り替えるべきだろう。(2013/10/08)

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「失業者支援策が、逆に格差を拡大する?」の著者

渡辺 誠

渡辺 誠(わたなべ・まこと)

オランダ・アムステルダム大准教授

1996年早稲田大学政経学部経済学科卒。98年京都大学大学院経済学研究科修士課程修了。2006年英エセックス大学経済学博士。カルロス三世大学を経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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定年退職した時に、既に退職済みの友人から「失業保険」を貰えるという話を聞き、職安に行った。当時も5%台の失業率で職安は混んでいたが、失業者が多い時程忙しくなるという職安という業種は社会の仕組み上の皮肉だと感じた。ある意味、病院とも似ている。病院は本来患者が少ない方が社会としては好ましいのだが、最近の大病院は医師が昼休みすらまともに取れない程込み合っている。医療費の本人負担が10%の老人で溢れ返っている。処方箋を発行された時に薬局に行けば、一度に10種類以上の薬をレジ袋一杯に受け取っている人も頻繁に見かける。医療機関は患者本人の負担感が少ない老人に必要以上の薬の処方箋を発行し、「健康のため」という大義名分に隠れて売上げ増大に励んでいる。職安の方に戻ると、失業保険を受け取る為には、定期的に職安に本人が出頭して「食探しをしている」事を事務手続き上確認しているのだが、本当に就活しているかどうか等は訊ねられもしない。全く無駄な形式的な確認作業をするのにも税金が使われている。私自身は職安では一切就活をせずに、個人でつてを頼って再就職の道を探っていて、定年退職後一年半で、海外での働き口が見つかった。失業保険受給も5ヶ月程度で終わったので、年金生活に入って一年くらいの時だ。私自身は失業保険の給付は初めての経験だったが、「定期的」と言う程何回も繰り返し受給している人もいるという。制度を「悪用」しているとしか言い様が無い。失業者に対する失業保険の給付審査や求人の紹介等の仕組みは何時くらいに出来た物か知りませんが、時代の要求に合っているとはとても思えない程無駄と形式に凝り固まっていて、有効に機能しているとは思えない。職業訓練の紹介や助成も含めて、全面的に仕組みを作り替えるべきだろう。(2013/10/08)

格差はあって当然だが、現在やそれ以上の格差を「正しい」というのは完全な飛躍である。それを承知していながらまともな説得ができていない。ただ「正しい」というだけでは筆者の敗北である。(2013/10/08)

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行天 豊雄 国際通貨研究所名誉顧問