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データが否定する「育児休業3年」の効果

逆効果になる危険性も

2013年11月21日(木)

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 今年の4月、安倍総理が育児休業期間を3年に延長する方針を表明した。少子高齢化に伴う労働力人口の減少に歯止めをかけることが狙いだが、背景には、一向に解消に向かわない保育所の待機児童問題がある。確かに、幼い子供を保育所に預けて働くことができない場合、仕事への復帰を保証する育児休業制度は、女性の雇用にとってプラスの側面を持つ。一方で、育児休業は、その間に専門知識や技術が失われるというマイナス面も持っている。これら以外にも、育児休業3年化は、女性の就業にプラスに働く要素とマイナスに働く要素のどちらも含んでいるため、最終的にどのような効果が現れるのか、理論的な議論だけでは決着がつかない。この記事では、データと実証分析に基づいた政策論を進めてみよう。

 筆者が現在進めている研究では、これまでの育児休業制度が女性の雇用に与えた影響を評価すると同時に、「育児休業3年」が実際に導入された場合に、女性の雇用に起こる変化を予測している。データには、公益財団法人家計経済研究所が作成した「消費生活に関するパネル調査」を利用した。この調査は1993年に始められ、調査対象は日本全国の24歳から50歳までの女性、およそ3500人で、ランダムに選ばれている。このため、育児休業3年化が日本人女性全体に及ぼす影響を考える上で、この調査は適切なデータを提供してくれるといえる。

仕事から長期間離れることのデメリット

 このデータを用いることで、女性が所得の変化や出産などに応じて、どのように就業や育児休業取得を決めるのか、知ることができる。加えて、これまでに行われてきた、育児休業給付金の引き上げなどの制度変更に対して、女性がどのように反応してきたのかも見ることができる。こうしてデータから読み取られた女性の行動パターンに基づいて、育児休業3年化が実現した際に、女性の就業や育児休業取得がどのように変化するのか、シミュレーションを通じて予測を立てた。

 やや技術的な話になるが、後に述べるシミュレーション結果の根拠になるので、女性の就業選択モデルについて説明しよう。ひとまず育児休業は脇に置いて、女性は就業するかしないかの2つの選択を行う単純なケースから始める。就業すれば、収入を得ることができるが、引き換えに自分の余暇時間を失う。幼い子供がいる場合には、保育費用もかかるし、子供をおいて働くことに心理的な抵抗も感じる。こうした子供がいることから生じる金銭的、心理的な就業への障害は、子供が大きくなるに連れて軽減されていく。

 働くことのメリットは、その時点で収入を得られることに留まらない。仕事の経験を積むことで、将来の収入を上げることにもつながっている。逆に、これまで就業していた人が仕事から離れてしまうと、その間に専門性が失われてしまう。これに加えて、労働市場の流動性が低いため、一度正社員の仕事を辞めてしまうと、再び別の正社員の仕事を見つけることは難しい。従って、一定期間仕事から離れてしまうと、専門性の喪失と、新たな職探しという2つの問題が生じてしまう。

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「データが否定する「育児休業3年」の効果」の著者

山口 慎太郎

山口 慎太郎(やまぐち・しんたろう)

カナダ・マクマスター大学准教授

1999年慶応義塾大学商学部卒業、2001年同大学大学院商学研究科修士課程修了。2006年米ウィスコンシン大学経済学博士(Ph.D)。専門は労働経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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