• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

オウムはなぜ日本のエリートの心を捉えたのか

上田紀行・東京工業大学教授と「宗教を考える」その2

2014年3月26日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

(前回から読む

池上:インドに行って、受験勉強的な合理主義の洗脳から脱した上田先生は、しかし、研究者としてはインドではなく、スリランカを対象にしていますよね。これはなぜですか?

上田 紀行(うえだ・のりゆき)
文化人類学者。1958年生まれ。東京大学教養学部文化人類学科卒業、同大学院博士課程修了。愛媛大学助教授を経て東工大へ。「癒し」という言葉を日本に広め、日本社会の閉塞性の打破を、新聞、テレビ等でも説く。近年は沈滞する日本仏教の再生運動にも関わり、ダライ・ラマとの対談も出版。東工大では学生からの授業評価が全学1位となり、東工大教育賞最優秀賞を受賞。著書『生きる意味』(岩波新書)は2006年度大学入試出題数第1位の著作となる。その他、『生きる覚悟』(角川SSC新書)、『「肩の荷」をおろして生きる』(PHP新書)、『ダライ・ラマとの対話』(講談社文庫)など著書多数。(写真:大槻純一、以下同)

上田:もちろんインドを研究対象にしたい、と最初は思いました。自分の洗脳を解くきっかけになった場所ですから。でも、調べ始めて気づきました。インド学って、ものすごく大きいんです。

池上:インドにも専門家がいるし、かつての宗主国であるイギリスにもインドの専門家が山ほどいますね。そして日本にも。

上田:その人たちはみんな、サンスクリット語もパーリ語も読み書きできる。日本にも仏教学の中村元先生という大家がいらっしゃる。僕が2年間くらいフィールドワークをしても、世界のインド学者から「ところであなた、サンスクリット語はお読みになれるんでしょうね」と言われたら、もう、アウトなわけです。サンスクリット語まではとても手が回らない。

池上:好きなものは見つかったけど、あまりに巨大すぎたわけですね。

上田:そうです。インドは巨大すぎて深すぎる。やるとなるとインドと心中しなければいけない。僕の興味は、インドそのもの、というよりも、インドを比較対象として、日本社会はなぜ抑圧性が高いのかとか、言論の自由があるのにみんなモノを言わないのかとか、周囲の目をこんなに気にしているのかとか、なんで自殺率がこんなに高いのかというような、日本における「生きづらさ」をテーマにしたいな、と思うようになっていたんですね。目指すのはインド学者ではないんです。

池上:受験勉強的な合理主義の洗脳から抜け出したご自身の経験を研究対象にしようと考えた。インドは日本を考える上でのいわばモノサシだったと。では、研究対象そのものとしてスリランカを選んだ理由は? インドの隣だったからですか?

日本では宗教がなぜ「自分ごと」ではないのか

上田:文化人類学の先輩たちが過去にどこへフィールドワークに行っているかリストを手に入れたんですね。何を調べたのかというと、先輩が行ってない国はないか。すでに誰かがフィールドワークしている国に行っても、絶対に頭が上がらなくなる。ブルーオーシャンを探さなければ、というわけです。そうしたら誰も行ってない国があった。それがスリランカでした。

池上 彰(いけがみ・あきら)
ジャーナリスト。1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。社会部記者として経験を積んだ後、報道局記者主幹に。94年4月から11年間「週刊こどもニュース」のお父さん役として、様々なニュースを解説して人気に。2005年3月NHKを退局、フリージャーナリストとして、テレビ、新聞、雑誌、書籍など幅広いメディアで活躍中。2012年4月より、東京工業大学リベラルアーツセンター教授として東工大生に「教養」を教える。主な著書に『伝える力』(PHPビジネス新書)、『知らないと恥をかく世界の大問題』(角川SSC新書)、『そうだったのか! 現代史』(集英社)など多数。

池上:おや、それってきわめて合理主義的な最適化の発想ですよね。与えられた条件の中で最適な答えを探すという、東工大生が得意な奴ですよ(笑)。

上田:あ、そうか。まだ抜けていなかった(笑)。いや、ちがうんですよ。このときはどちらかというと動物的な本能で選んだ。自分が自由に生きられるところを考えたんですよ。先輩がいるところに行っても、全部食い尽されているぞ。自分がサバイバルできる場所を探さなきゃ、というわけです。

池上:棲み分けをしたわけですね。たしかに動物的です。スリランカは仏教国です。仏教への関心が高まったのは、スリランカを研究対象にしたのがきっかけですか?

上田:いや、その時点では、まだ宗教そのものには興味はなかったんですよ。なぜこんなに自分は元気がないのか。どうやったら生きる道を見つけられるのか。これほどまで孤独感にさいなまれるのはなぜか。――僕が考えていたのはそんなことです。今にしてみれば、インドに行かなくても、スリランカを研究対象にしなくても、最初から日本で宗教と向かい合えば、自分のこの問いに対する答えを探すことだってできたはずでした。でも、そうしなかった。

池上:なぜでしょう?

この連載が書籍になります!
池上彰の教養のススメ』(2014年4月発売)。

池上彰の教養のススメ』(2014年4月発売)。

 2012年、池上彰さんが東京工業大学のリベラルアーツセンターの教授に就任して2年。以来、同僚である哲学者の桑子敏雄先生、文化人類学者の上田紀行先生、生物学者の本川達雄先生と一緒に、「教養」について考え抜いた本です。

 「教養」なんて役に立たない。英語だのITだのすぐに役立つ実学が大事だ!といわれて久しい――。でも、時代の変革期に「本当に役に立つ」のは、新しいものを生み出すのは、むしろ「教養」の力です。皆さんもこちらを読んで、どうぞ「教養にまみれて」ください。

コメント6

「池上彰の「学問のススメ」」のバックナンバー

一覧

「オウムはなぜ日本のエリートの心を捉えたのか」の著者

池上 彰

池上 彰(いけがみ・あきら)

ジャーナリスト

1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。報道局主幹を経て、2005年3月よりフリージャーナリストとして活躍中。2012年4月から東京工業大学で東工大生に「教養」を教えている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

誰もやらない領域を根気強く続けられるかが成功の秘訣。

田坂 正樹 ピーバンドットコム社長