“がん宣告”を受けた女性課長を脅す「上司の偏見」

がんにかかっても、働き方さえ工夫すれば共存できる

 今回は、「コラムで取り上げるべき話題だ」と思いながらも、「どう、取り上げればいいのか?」との気持ちから、なかなか書けなかったことを書こうと思う。

 45歳。女性。管理職。未婚。部下あり。子供なし――。

 そんな1人のワーキングウーマンのフィールドインタビューを終えようとした間際、彼女がボソッっと切り出した。

 「実は私、乳がんが見つかってしまって。来週、やっと手術なんです」

 なんと彼女は、私のインタビューを受けるふた月前に、乳がんの宣告を受けていたのである。彼女が、「やっと……」と語ったのは、患者が多く、手術をするにも、治療をするにも、“待たされた”から。

 「乳がんの患者さんって、ものすごく増えているみたいで。河合さんも、検診、マメにうけてくださいね」

 彼女自身、不安なはずなのに……。そう彼女は私を気遣ったのである。

 私事ではあるが、私の母も乳がんを患っている。かなり昔。まだ私が中学生のとき、母は乳がんになり全摘出している。

 だが、幸い再発することもなく、元気に暮らしている。乳がんだったことを忘れてしまうほどに、だ。実に元気に。思い出す瞬間といえば、温泉に一緒に行ったり、放射線治療の跡が見えない服を選ぶときくらいだ。

 なので、乳がん告知を不安がる彼女に対し、

 「大丈夫。心配しなくて大丈夫。私の母も手術したけど、全然元気だから」と励ました。

 が、その一方で、同年代の彼女の告白に、戸惑った。

 「もし、自分だったら……」

 そう思うと、なんとも言葉にしがたい感情に襲われたのだ。

 感情が割れているときというのは、上手いこと原稿が書けない。書いているうちに、感情があっちこっちに揺れて、伝えたいことがゴチャゴチャになる。だから、書けないまま時間が過ぎていたのである。

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著者プロフィール

河合 薫

河合 薫

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

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