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賃上げの実現は、政治介入の手柄ではない

GDPデフレーターとCPIのかい離から見た本当の実質賃金

2014年4月4日(金)

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 2014年度の春闘の報道も一段落したようだ。ボーナスアップだけではなくて、一部の大企業では思い切ったベースアップに踏み込んだ一方で、同じ業界でも企業業績に応じて賃上げ状況は様々で、一部大企業の正社員に対して行われた賃上げは中小企業や非正社員には遠く及んでいないとする論調が多い。

 また、今年の賃上げは安倍政権からの度重なる賃上げ要請に対して、日本経団連に幹部を出す大企業が率先して答えた政治的な賃上げだという見方が繰り返し報道されている。また、その見方を受けて、経済団体はこのような政治介入は今年限りにしてほしいと思っているようだ。

 また、労働組合はそのお株を奪われて立場がなくなってしまったと捉えているようである。さらにこのような受け止め方を前提に、賃上げを通じて経済の好循環を実現するとしてアベノミクスが動き出したと評価する民間エコノミスト・経済学者もいる。

賃上げは政治介入の結果なのか?

 今春の賃上げが政治介入の結果だと総括してしまえば、賃金が上がらない経済の局面では政治的な介入が切望されるようになるであろう。しかし、そのような理解は経済学部の教室で教えられている賃金決定の仕組みとは全く異なるものだ。

 もちろん、現実の労働市場ではスムーズな調整が起こらないことから賃金交渉に一定の説明力を持たせる経済理論もあるし、自分が教室で教えている経済理論では到底現実経済の動きを説明できないと思っている現実派の経済学者もいるだろう。しかしもう少し丁寧に基礎的な理論が現実を説明しているのか、していないのか、検証する必要があろう。

 初歩的な経済学で賃金がどのように決定されるかを見てみよう。労働市場に企業と労働者が多数存在し、特定の企業や労働者に賃金決定の市場支配力がない状況を想定すると、賃金は労働がどれだけ生産に貢献するかを表す「限界生産物価値」に等しくなるとされている。限界生産物価値とは労働を少しだけ余分に投入した時に生産物がどれだけ増えたかを価格ベースで測ったものである。

 実際には少しだけ余分に投入したことに対してどれだけ生産量が増えたかを測定することが容易ではないため、限界生産物価値の計測は難しい。しかし、経済全体の資本・労働の投入と生産量の関係がコブ・ダグラス型と呼ばれる関数に従っているとすれば、労働の限界生産物価値を労働の平均生産物価値を使って表現でき、賃金が労働の平均生産物価値に比例することを示せる。

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「賃上げの実現は、政治介入の手柄ではない」の著者

川口 大司

川口 大司(かわぐち・だいじ)

一橋大学経済学研究科教授

1994年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。96年、一橋大学経済学研究科修士課程修了、2002年、米ミシガン州立大学経済学博士(Ph.D.)。2013年から現職。専門は労働経済学、応用計量経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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