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理系、恋愛音痴、コミュ障を「教養豊か」に変えるには

英国名門大、教養教育の秘密【後】

2014年7月1日(火)

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オックスフォード大学トリニティ・カレッジ食堂(お昼前の時間帯に撮影。たまたま何かのパーティがあるのかナプキンやテーブルクロスが準備されていました)

池上:前回、オックスフォード大学とケンブリッジ大学、そしてインペリアル・カレッジ・ロンドンで、教養教育の現状を視察してきたお話をしました。今回は、そこで得た知見をどうしたら東工大や、東工大以外の日本の大学に活かせるか、という話をしたいと思います。伊藤先生、いかがでしょうか。

伊藤:普通に考えるとけっこう応用が難しいんですよね。なにせカレッジでの教養教育は、一流の教員が生活を学生と共にしながらマンツーマンに近い形で問答をしながら教えていく。大教室でのマス教育の対極にあります。

池上:じゃあ日本では英国のカレッジ型の教育は難しい?

伊藤:そのまま持ってくるのは無理です。でも、講義の作り方に、英国流を応用することはできそうだな、と思いました。

 たとえば、学生たちが書いたり考えたりした論文やテキストを議題に、他の学生たちが意見を述べたり、反論を述べたりする、というインタラクティブな授業を行うのは可能です。教員から学生へ一方的に知識を伝達するだけではなく、学生に発表させ、その発表をベースにみんなで考えてもらう。視察した大学では、少人数の講義で行われていた方式ですが、ある程度人数がいる授業でも応用できるはずです。

池上:そもそも根本的な疑問なのですが、なぜ英国の名門大学では学生たちを教師がマンツーマン指導するような贅沢な体制がとれるのですか?

「おしゃべり」は教育にとっても重要です

上田:英国の大学で少人数教育が可能なのは、大学教育にかけているコストが日本とまったく違うからです。オックスフォード大学で、『イギリスの大学・ニッポンの大学』の著者でもある現代日本研究所の苅谷剛彦教授に話を伺ったとき、まさにそうおっしゃっていました。

池上:ちなみに日本という国が大学教育に掛けているコストは、OECD加盟国の中で最低です。

上田:だから、日本でも英国の大学のような教育制度を求めるのであれば、政府がコストをかける決断をしなくてはならないと思いますね。

池上:学生の負担は、米国の名門大学だと年間500万円くらいかかりますが、英国はきわめて安いですよね。

桑子:そうなんです。学生の負担はけっして大きくないんです。オックスフォード大学やケンブリッジ大学には寄付金が多く集まりますから。そのうえ、イギリス人だと学費がさらに安くなります。代わりに、外国人留学生の学費が高い。でも、海外のお金持ちは、自分の子供をオックスブリッジ(オックスフォード大学またはケンブリッジ大学)の卒業生にするために、ポンと寄付をするし、高い学費も払ってくれる。

池上:桑子先生はどんな印象を持たれましたか? 桑子先生は、今回視察に行っただけでなく、若手の頃に2年間、ケンブリッジにいらしたことがありますが。

桑子:えーと、「おしゃべりの場」を東工大のキャンパスに設けたいですね。

池上:おしゃべりの場?

上田 紀行先生
(うえだ・のりゆき)

文化人類学者。1958年生まれ。東京大学教養学部文化人類学科卒業、同大学院博士課程修了。愛媛大学助教授を経て東工大へ。「癒し」という言葉を日本に広め、日本社会の閉塞性の打破を、新聞、テレビ等でも説く。近年は沈滞する日本仏教の再生運動にも関わり、ダライ・ラマとの対談も出版。東工大では学生からの授業評価が全学1位となり、東工大教育賞最優秀賞を受賞。著書『生きる意味』(岩波新書)は2006年度大学入試出題数第1位の著作となる。その他、『生きる覚悟』(角川SSC新書)、『「肩の荷」をおろして生きる』(PHP新書)、『ダライ・ラマとの対話』(講談社文庫)など著書多数。(写真:大槻 純一、以下同)
桑子 敏雄先生
(くわこ・としお)

哲学者。東京工業大学大学院教授、同リベラルアーツセンター長。博士(文学)。1951年群馬県生まれ、75年東京大学文学部哲学科卒業、同大学院人文科学研究科哲学専修課程、博士課程修了。南山大学助教授などを経て東工大へ。2012年4月よりリベラルアーツセンターを率い、東工大生の「教養」力向上に務める。著書に『西行の風景』『感性の哲学』(日本放送出版協会)、『風景のなかの環境哲学』(東京大学出版会)、『空間の履歴』(東信堂)など多数。
池上 彰
(いけがみ・あきら)さん

ジャーナリスト。1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。社会部記者として経験を積んだ後、報道局記者主幹に。94年4月から11年間「週刊こどもニュース」のお父さん役として、様々なニュースを解説して人気に。2005年3月NHKを退局、フリージャーナリストとして、テレビ、新聞、雑誌、書籍など幅広いメディアで活躍中。2012年4月より、東京工業大学大リベラルアーツセンター教授として東工大生に「教養」を教えます。主な著書に『伝える力』(PHPビジネス新書)、『知らないと恥をかく世界の大問題』(角川SSC新書)、『そうだったのか! 現代史』(集英社)など多数。
伊藤 亜紗先生
(いとう・あさ)

美学者。1979年生まれ。東京工業大学リベラルアーツセンター准教授、同大学院社会理工学研究科准教授(兼任)。生物学者を目指して大学に入学するも3年次から文転。東京大学文学部思想文化学科卒業、同大学院人文社会系研究科博士課程を単位取得のうえ退学、のち博士号取得。日本学術振興会特別研究員を経て2013年より現職。現代アートや身体について研究するかたわら、作品制作や雑誌編集にもたずさわる。著書に『ヴァレリーの芸術哲学、あるいは身体の解剖』(水声社)。

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「理系、恋愛音痴、コミュ障を「教養豊か」に変えるには」の著者

池上 彰

池上 彰(いけがみ・あきら)

ジャーナリスト

1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。報道局主幹を経て、2005年3月よりフリージャーナリストとして活躍中。2012年4月から東京工業大学で東工大生に「教養」を教えている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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