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「小さく生んで大きく育てよ」は間違い

日本人の学力の違いは、遺伝で35%説明できる

2014年7月28日(月)

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 日本では長い間、出産において小さく生んで大きく育てよ、と言われてきた。だがこれは、端的にいうと「間違い」である。出生児の体重が軽いほうが安産になりやすいため、帝王切開の技術が十分に発達していなかった時代に、妊産婦が出産によって死亡するリスクを低下させるために、広く信じられるようになったといわれている。

 しかし、現代の妊産婦死亡率は、10万人中3.8人(厚生労働省、2011年)と低く、むしろ出生児の低体重がもたらすリスクについて様々に研究されるようになってきている。結論から言うと、母体の中で胎児として過ごす10か月は、その子どもの長期的な人生の帰結にまで影響を与えることが分かってきている。

増え続ける低出生体重児

 それにもかかわらず、厚生労働省の「出生に関する統計」によると、低出生体重児(出生体重が2500g未満)の占める割合は1975年以降増加の一途を辿っており、直近の2009年では新生児の8.3%に達している。2012年の川口大司一橋大学教授と野口晴子早稲田大学教授の研究によると、新生児体重の減少が著しいのは特に2000年から2005年にかけてであり、出生児の低体重がもたらすリスクの認知度はおそらくまだまだ低いものとみられる。

 出生児の低体重はなぜ生じるのか。近年の医学研究は、胎内での低栄養を主因として挙げている。小原美紀大阪大学准教授と大竹文雄大阪大学教授の2009年の論文や前出の川口教授・野口教授の論文は、親の社会経済的地位の低さが子どもの低体重に影響していることを示しており、親自身の貧困が、母親の栄養状態の悪さに繋がっているであろうと考えられる。その一方で、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」でも示されている通り、20-30歳代女性はやせ型志向でBMIは低く、自ら望んで栄養摂取量が十分でないことを指摘する向きもある。

 低体重出生のリスクが十分に認知されていないことは深刻な問題である。医学研究は、低体重出生がその後の子どもの健康に与えるリスクについての実証研究を蓄積しつつあるが、経済学もまた、低体重出生が子どもの成績、学歴、就業などについて与える因果的な効果についての実証研究を蓄積している。そして、実は経済学の既存研究から得られた結論は見事に一致している。「小さく生んで大きく育てよ」は間違いであるということだ。

  しかし、この結論を得られるようになるまでには、それなりの紆余曲折があった。例えば、出生児の低体重とその子どもの将来の成績の間に負の相関関係が見出せたとしよう。低体重で生まれると、その後の成績が振るわない、というわけだ。これは実際に多くの研究でも確認されている。

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「「小さく生んで大きく育てよ」は間違い」の著者

中室 牧子

中室 牧子(なかむろ・まきこ)

慶応義塾大学准教授

慶応義塾大学総合政策学部准教授。1998年慶応義塾大学卒業後、日本銀行、世界銀行を経て、米コロンビア大学博士課程修了(Ph.D.)。2013年から現職。専門は教育経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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