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「小さく生んで大きく育てよ」は間違い

日本人の学力の違いは、遺伝で35%説明できる

2014年7月28日(月)

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 例えば、前出の小原准教授・大竹教授の分析では、厚生労働省の「人口動態統計」と文部科学省の「全国学力・学習状況調査」の都道府県別集計データを用いて、両者の間に負の相関関係があることを見出している。

「相関」なのか、「因果」なのか?

 しかし、問題はこれが「相関関係」なのか、「因果関係」なのかということである。出生体重が子どもの成績に与える因果的効果を持つ、という可能性はある。しかし、子どもが胎内にいるときに、自身の栄養・健康状態に気を配るような母親は、おそらく子どもが生まれた後に子どもの成績に関心の強い母親である可能性が高い。

 実際に、南カリフォルニア大学のダタール教授らによる2010年の研究によると、低出生体重の子どもは母乳育児ではなく、保健師の訪問やワクチン接種などが少ない傾向にあるばかりか、幼稚園や保育園への出席も低い傾向にある。この場合、出生体重と子どもの成績の間の相関を「見せかけの相関」といって、本当は出生体重と子どもの成績には因果関係がないのに、親の子どもに対する関心の高さなどというような観察不可能な要因によって、あたかも因果関係があるかのようにみせかけてしまう、という状態である可能性が高い。

 このように因果関係を明らかにするというのは簡単なことではない。

 今、ドラえもんの世界を例にとって考えてみよう。出木杉君とのび太君がいる。周知の通り、出木杉君は成績がよく、のび太君がドラえもんの助けなしに出木杉君に一矢報いることは難しいだろう。いま仮に、出木杉君の出生体重が3500gで、のび太君は2400gだったとしよう。出木杉君とのび太君の成績の差は、出生体重の差によるものだと断定できるだろうか。

出木杉とのび太の違いは?

 当たり前だが、それはできない。両者の親の子どもに対する関心や家庭環境の違いもさることながら、もともと利発そうな出木杉君と何かあればドラえもんに頼ろうとするのび太君では、本人のもともとの能力もかなり異なっていそうである。このように出生体重と成績の両方に影響するような親や本人の観察不可能な要因は無数に考えられる。

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「「小さく生んで大きく育てよ」は間違い」の著者

中室 牧子

中室 牧子(なかむろ・まきこ)

慶応義塾大学准教授

慶応義塾大学総合政策学部准教授。1998年慶応義塾大学卒業後、日本銀行、世界銀行を経て、米コロンビア大学博士課程修了(Ph.D.)。2013年から現職。専門は教育経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師