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「著名人」自殺報道がもたらす負の連鎖

2014年10月20日(月)

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 今年8月、理科学研究所の笹井芳樹氏が自ら命を絶ったのは記憶に新しい。笹井氏の死はマスコミによって大きく取り上げられ、笹井氏の経歴や自殺の動機に関して加熱報道とも呼べる状態がしばらく続いた。

 それらの報道が続く中で、著者が心配していたことがある。それは、笹井氏の死に関する報道を契機として日本全国で自殺者数が増えるのではないかという点である。

 読者の中には、芸能人が自殺した後に、ファンが後を追って自殺した例を記憶されている方もいらっしゃるかもしれない。よく知られているのは、1986年に歌手の岡田有希子が人気絶頂期に飛び降り自殺した後に、若い男性の自殺が相次いだケースであり、当時かなりの話題となった。

 また1998年に人気ロックグループ、エックス・ジャパン のギタリストが急死した際には、その死因が自殺と報じられたこともあり、ファンの後追い自殺があったと伝えられている。

芸能人の後追い自殺は良く知られているが…

 芸能人の自殺を契機に一般の人の自殺が増えることは、海外における過去の学術研究によって確認されている。例えば、 2003年4月には香港の著名な俳優・歌手であったレスリー・チャンによる飛び降り自殺が起きたが、その報道後には香港で特に若い男性の自殺が増加したこと、また発見された遺書の中にはレスリー・チャンの名前が記されたものもあったことが香港の研究者らによって報告されている。1994年に米国のロックシンガーであるカート・コバーンが自殺した後には、フランスで若い男女の自殺が増えたという研究報告もある。

 では、笹井氏のケースのように、著名人であっても芸能人ではない人物の自殺が報道された場合、それを契機として自殺者数が増加するということはあるのだろうか。報道の対象が芸能人でない場合、一連の報道が自殺者数の増加を引き起こすことなどないだろうと思われる方がいても不思議はない。

 実際、過去の学術研究のほとんどが芸能人の自殺に関する報道を対象としており、芸能人以外の著名人に関する自殺報道が自殺者数を増加させるという可能性はあまり考慮されてこなかった。

 ところが、我々の最新の研究によると、芸能人だけでなく、政治家、スポーツ選手、大企業の経営者といった著名人についても、自殺についての報道があった後には自殺者数が急増する。しかも、自殺者数は報道初日に跳ね上がり、その増加傾向はほぼ10日間続くのである。

 この結果は著者らが米エール大学経済学部博士課程に在学中であった森浩太氏(現ニールセン)とともに、1989年から2010年の間に起きた 109名の著名人の自殺に関する報道のタイミングと日別の自殺者数を分析することによって得られたものである。分析結果は今年初めに英文学術雑誌に掲載されている。

コメント14件コメント/レビュー

「…『人は概ね自分で思うほどには幸福でも不幸でもない。肝心なのは望んだり生きたりすることに飽きないこと』だそうだ。」(2014/10/21)

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「「著名人」自殺報道がもたらす負の連鎖」の著者

上田 路子

上田 路子(うえだ・みちこ)

米シラキュース大学研究助教授

米マサチューセッツ工科大学でPh.D(政治学)取得、米カリフォルニア工科大学助教授などを経て2012年から現職。東京大学医学系研究科客員研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

松林 哲也

松林 哲也(まつばやし・てつや)

大阪大学国際公共政策研究科准教授

2007年に米テキサスA&M大学大学院政治学部博士課程を修了、Ph. D.(政治学)取得。米ノーステキサス大学政治学部助教授を経て、2013年9月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

「…『人は概ね自分で思うほどには幸福でも不幸でもない。肝心なのは望んだり生きたりすることに飽きないこと』だそうだ。」(2014/10/21)

デリケートな問題だけに、非常に意義のある検証だったと思います。自殺報道もそうだが、殺人・傷害事件についても過剰な報道があって辟易していますが、これも類似犯を増やしていることはないのか、ぜひ検証をしていただきたい。結果は日経紙面で大々的に報告すべきと思います。おどろおどろしいナレーションや再現場面、凶器についての詳細な報道(昔は「刃物で刺した」程度のことが「台所の包丁を持ち出して云々」とやたらに詳しいのは、聞いているだけで気分が悪くなる)など、何のために報道しているのか、目的がまったくわからない。もはや報道とは言えない、ただの露悪趣味。(2014/10/21)

非常に有意であると同時に危険な記事であると感じます。が故の文言、文意についての慎重さと掲載に至った判断は支持いたします。該当記事に触れた際、絶望感、とでも言うような曖昧模糊な感覚を覚えることは個人的にありますね。(2014/10/21)

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