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賃金格差拡大の犯人探し、世間の「常識」は経済学者の「非常識」?

国際貿易と賃金格差の関係

2014年11月4日(火)

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 賃金格差に関して多くの先進国で見られた経験的事実の1つは、製造業で就業している熟練労働者の非熟練労働者に対する相対賃金が、1980年代後半から上昇し始めたことであろう。では、一体どのような要因が賃金格差の拡大を引き起こしたのだろうか?

 恐らく私たちがよく見聞きするジャーナリスティックな議論は、中国などの低賃金国との貿易が原因だとするもので、そうした議論は世間の「常識」となっているようにすら見える。例えば、自国の低賃金労働者が職を失ったり、彼らの賃金が上がらなかったりするのは、中国などから安い製品を輸入しているからだとする論調だ。

 一方、多くの経済学者は、国際貿易は賃金格差拡大の主要な要因ではないと考えている。コンピュータの導入などの技術変化が主要な要因であると考えるのが経済学者の「常識」だからだ。

 このように、一般的な「常識」は経済学者の世界では常識ではなく、逆に、経済学者の「常識」が一般的な常識ではない、という場合がよくある。それでは世間一般と経済学者は、常識を共有できない運命にあるのだろうか? 答えは否である。というのも、国際貿易が格差の重要な要因だと主張する経済学者もいるからだ。

 そこで、本コラムでは、まず、国際貿易が賃金格差拡大の主要因であると考える一般的な「常識」に対する経済学者側の批判を解説する。次に、技術変化が賃金格差拡大の主要因であると考える経済学者の「常識」を紹介する。最後に、私たちの「常識」をサポートする経済学者の議論を紹介する。

私たちの「常識」に対する経済学者の批判

 先に述べたように、国際貿易が賃金格差拡大の主要因であると考える世間の「常識」は、経済学者によって批判されてきた。主な批判は3つある。

(1)「国際貿易と賃金格差のパズル」

 1つ目の批判は、「国際貿易と賃金格差のパズル(謎)」に依拠している。国際貿易と賃金格差に関するデータには、標準的な国際貿易モデルでは説明できない「パズル」が存在するからである。

 例えば米国とメキシコの貿易で考えよう。標準的な国際貿易モデルであるヘクシャー=オリーン・モデルに基づけば、理論上、貿易を自由化した後は、熟練労働者の非熟練労働者に対する相対賃金は、(先進国である)熟練労働者が豊富な米国では上昇し、(途上国である)非熟練労働豊富なメキシコでは低下すると予測される。つまり、米国では貿易量と相対賃金に正の相関が、メキシコでは負の相関が予測される。

 ところが現実には、図1及び図2が示すように、1980年代後半から90年代前半の米国とメキシコ両国で、貿易量と相対賃金に正の相関が見られた。つまり、米国だけでなくメキシコでも、熟練労働者の非熟練労働者に対する相対賃金が上昇したのだ。これが「国際貿易と賃金格差のパズル」だ。

コメント1件コメント/レビュー

「先進国が途上国へとアウトソーシングする財は、途上国の基準では逆に、これまで生産されていたどの財よりも熟練労働集約的であるとする」アウトソーシングであろうとなかろうと、先進国で売れる水準のモノを途上国で作ろうとすればそうなる事は素人でも分かりそうです。専門家の脳味噌は高度なのに、そんな単純な事にも気付かず、条件設定は更に単純なのでしょうね。しかし、熟練労働者と非熟練労働者の定義が書かれていません。経験年数の差かしら?コンピューターを熟練労働集約的とするのも違和感があります。部品製造は集約的では無いでしょうし、組み立てに熟練労働の必要は無いでしょう。アパレルでも製糸は熟練労働ですが集約的では無く、縫製は集約的ですが熟練でなくてもできそうです。(2014/11/04)

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「賃金格差拡大の犯人探し、世間の「常識」は経済学者の「非常識」?」の著者

黒川 義教

黒川 義教(くろかわ・よしのり)

筑波大学人文社会系准教授

2007年米ミネソタ大学からPh.D.取得(経済学)。米ニューヨーク州立大学バッファロー校経済学部訪問助教授、筑波大学人文社会系助教などを経て2012年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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「先進国が途上国へとアウトソーシングする財は、途上国の基準では逆に、これまで生産されていたどの財よりも熟練労働集約的であるとする」アウトソーシングであろうとなかろうと、先進国で売れる水準のモノを途上国で作ろうとすればそうなる事は素人でも分かりそうです。専門家の脳味噌は高度なのに、そんな単純な事にも気付かず、条件設定は更に単純なのでしょうね。しかし、熟練労働者と非熟練労働者の定義が書かれていません。経験年数の差かしら?コンピューターを熟練労働集約的とするのも違和感があります。部品製造は集約的では無いでしょうし、組み立てに熟練労働の必要は無いでしょう。アパレルでも製糸は熟練労働ですが集約的では無く、縫製は集約的ですが熟練でなくてもできそうです。(2014/11/04)

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