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米スポーツ界に革命を起こしたダイナミックプライシング(上)

革新的な値付け手法の誤解と真実

2014年11月19日(水)

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 今日は、スポーツ観戦チケットの値付けの話をしようと思います。突然ですが、皆さんは「ダイナミックプライシング」(Dynamic Pricing)という言葉を聞いたことはありますか? レベニューマネジメント(顧客の購入意欲に応じて商品・サービスの価格と割当量を変えることで収益の最大化を図る)の考え方をスポーツ界に応用した値付け手法です。

 これまで、スポーツ観戦チケットの値付けはシーズン開始前に行われるのが普通でした。例えば、野球なら4月から10月頃まで開催されるシーズンに備えて、開幕前にホームゲーム全試合(MLBなら81試合)の値段を決めていました。多くは、座る座席の場所(席種)に応じて価格帯を変えて値付けを行います。フィールドに近い席ほど値段が高くなり、この値付けが全試合一律に適用されることになります。

 恐らく、これが一般的にイメージされるチケットの値付け方法でしょう。しかし、半年以上も前に試合の「本当の価値」を正確に予測するのは簡単ではありません。いや、事実上不可能と言ってもいいくらいです。なぜなら、「本当の価値」を決める要素は多岐にわたる上、事前予測が困難なものが多いからです。

 「自チームの成績」や「対戦相手の成績」は、試合の価値を決める代表的な要素の1つです。消化試合なのか、優勝を決める試合なのかで、その試合の持つ重みは大きく異なってしまいます。でも、これはシーズンが深まるまで誰にも予想できません。また、野球なら、「誰が先発するのか」(エースが投げるのかどうか)、「天気はどうなのか」(暖かいのか、寒いのか)、「何か大きな記録がかかっているのか」(通算200勝や2000本安打など)などによって、チケット購入者が実際に感じる価値は変動します。

 つまり、「価格は一律」がこれまでの業界スタンダードだったのに対して、「その価値は変動する」のが現実に起こっていたことでした。要は、価値が変動するものをずっと同じ値段で売っていたわけです。いや、同じ値段で売らざるを得なかった、と言った方が正確かもしれません。

 理由は2つあります。第1に、試合の持つ「本当の価値」を測定することが難しいため。第2に、仮に測定できたとしても、それを実際のチケット価格に反映させる仕組みがないため。しかし、統計学のビジネスへの応用が進み、ITが進歩した現在、この2つの「不可能」が「可能」になりました。今では、チケットの「時価」を測定し、それをリアルタイムで売り値に反映する仕組みが可能になりました。これが、「ダイナミックプライシング」です。

 今回のコラムでは、米スポーツ界のチケット市場に革命を起こした「ダイナミックプライシング」について、その基本的な考え方や期待効果、課題などについて解説しようと思います。

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「米スポーツ界に革命を起こしたダイナミックプライシング(上)」の著者

鈴木 友也

鈴木 友也(すずき・ともや)

トランスインサイト代表

ニューヨークに拠点を置くスポーツマーケティング会社、「トランスインサイト」代表。一橋大学法学部卒、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)出身。スポーツ経営学修士。中央大学非常勤講師

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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