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医療システム改革で乗り越えなければならないジレンマ

デジタルデータとイノベーションの活用で欠かせない視点

2015年3月23日(月)

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 言うまでもなく、日本の医療システムは大きな転換点に立っている。

 これまでは、先進国の中でも、GDP(国内総生産)比の医療コストが比較的低く保たれる一方、医療サービスの品質は高く、国民の平均余命が世界有数レベルに達することに大きく貢献してきた。医療サービスへのアクセスも相対的には容易かつオープンで、自ら加入する保険次第の米国や、医療が税でカバーされるものの、手術待ち半年などということが起こりがちな英国などとは大違いだ。

 しかし、高齢化と既に地方で顕在化している人口減少のインパクトは強烈だ。国の社会保障費に含まれる医療費給付は、2012年から2025年の間に約19兆円増え、1.5倍になると推定されている。人手不足の影響も深刻で、地方によっては、医師不足、看護士不足が既に進行していて、病院の経営自体が危うくなるような例も出ている。

 団塊世代の高齢化もあり、75歳以上が全人口に占める割合は、1990年の5%から2025年には18%にまで増加すると予想される(出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」)。

 これは、医療サービスの需要が激増するということを意味しており、担い手不足の中、どう供給量を増やすかは大変な難問だ(さらに言うと、その後、人口減に伴って医療サービスの総需要は減る可能性が高く、やみくもな投資もしづらい難しさがある)。

 こういう状況の中、いろいろな医療システム改革論が出てきているが、その多くは、支払いの抑制策だ。新薬ではなく後発品(ジェネリック)の利用割合を高める、データのチェックによって重複受診や検査などのムダを減らす、といった類である。これら自体は大事なことで、異論はないのだけれど、本当にそれだけでよいのだろうか。

医療費の抑制を巡って感じざるを得ない矛盾

 特に、「これは矛盾してないかな」と思うのが、次の2つの考え方が両方とも当然のことのように語られることだ。

 (1)日本は高齢化先進国として、医療・介護分野で課題解決を先んじて迫られる。その意味で、医療・介護分野は成長産業である。

 (2)医療(介護)システムを維持していくためには、支払いを抑制し、総費用の増加を抑えなければならない。

 なぜなら、「市場は伸びる」と、同時に、「市場規模は抑える」ということに聞こえてならないからだ。

 もちろん、この一見矛盾した状況を解決する早道は、国外に需要を求める(医療サービス輸出ないし医療ツーリズムによる外人需要獲得)か、公的保険の外側の市場を伸ばし、総需要は増えても公的負担の増加は抑制することだ。

 ただ、医療サービス輸出や医療ツーリズムは非常に価値ある行為だとはいえ、経済成長を牽引する規模には、そう簡単には達しない。

 公的保険の外側については、ご承知の通り、いわゆる混合診療についての論争が続いており、ごく限定的な「患者申し出治療」という形での拡充がようやく見込める段階になったにすぎない。

 個人的には、患者側と治療者側に情報の非対称性がある医療分野では、市場の力だけで適切な治療法が選択されるようになるとは思えない。従って、混合診療の拡大には一定の限界があり、医療コスト抑制の効果を過度に期待するわけにはいかないと考えている。

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「医療システム改革で乗り越えなければならないジレンマ」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCG シニア・アドバイザー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経てボストン コンサルティング グループ(BCG)に入社。BCG日本代表、グローバル経営会議メンバー等を歴任。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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