• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

独機墜落で露呈した“人命無視”の負のスパイラル

「とりあえず絆創膏」で問題解決を先送りする、人間の愚かな性

2015年4月7日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 「もう(トイレに)行って大丈夫です」
 「操縦を任せる」
 「私にできるといいのですが」

 この8分後、乗客乗員150名を乗せた独ジャーマンウイングスの旅客機は急激に高度を下げ、フランス南東部アルプス山中に墜落。機体は大破した。

 「副操縦士が故意に降下ボタンを押した可能性が高い」――。

 このフランス当局の衝撃的な発表を聞いたとき、私の頭に真っ先に浮かんだのが、コックピットクルーが持ち歩く、黒い“カバン”だった。

 「コックピットの計器の数値は絶対に暗記してはいけない。常にマニュアルを見ながら数字を確認して、運行中も、計器の場所と数字の確認を、声に出しながらやらないとダメ。覚えた途端にミスは起こる。絶対に覚えないことが、ミスを防ぐ最大の方法なんだ。これ、持ってごらん」

 フライトエンジニア(FE)の方はこう言って、見るからに重たそうな黒いパイロットケースを差し出した。

 ※米ボーイング747-400が導入されるまで、コックピットには機長、副操縦士、FEの3人が乗務していた。

カバンの重さは、“人の命の重さ”

 「重たいだろ? これがね、僕たちが人命を預かっているという、仕事の重さ、なんだ」

 腕が伸びちゃうんじゃないかってぐらい重くて、軽く10キロはありそうなカバンは、「“僕たち”の仕事の重さ」だ、と。 「“人間ならでは”のミスを防ぐために、“僕たち”の仕事の重さを忘れないために、たくさんのマニュアルの入った大きな重たいカバンを持って歩く」んだ、と。 新人客室乗務員(CA)だった私に、FEさんは教えてくれたのである。

 それは分厚いサービスマニュアルをどうにかして小さくして、軽くすることばかりを考えていた私を、ハッとさせた言葉であり、「訓練、訓練、訓練」の嵐で「30過ぎまで食えない」と言われていたP訓(パイロット訓練生)の謎が解けた瞬間でもあった。

 その“僕たち”の1人が、自分の意思で、僕たちの大切な人を、道連れにしたのである。

  • うつ病
  • 網膜剥離
  • リストラへの恐れ
  • 彼女にふられたことでの落ち込み……

 “故意に墜落させた謎”を巡って、アンドレアス・ルビッツ副操縦士に関する情報が漏れ伝えられている。

 だが、彼はこれまで一瞬でも、“カバンの重たさ”を感じたことがあったのだろうか?――。

コメント18件コメント/レビュー

リスクマネジメントの導入、PDCAを回せ、、といった話は、製造業の労働安全やIT,運輸だけでなく、近年はホワイトカラーにも浸透しつつある。その目的や手段自体に疑問はない。しかし、その過程で膨大な文書作成を強いたり、システム浸透の体裁を保つために無理して数値目標を遵守させるなど、現場を疲弊させるケースも少なくないのではないか?トラブルを減らし、事業継続できる筋肉質な組織を作るのは当然だが、やり過ぎて疲労骨折寸前な組織は多いと思う。(2015/04/11)

「河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学」のバックナンバー

一覧

「独機墜落で露呈した“人命無視”の負のスパイラル」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

リスクマネジメントの導入、PDCAを回せ、、といった話は、製造業の労働安全やIT,運輸だけでなく、近年はホワイトカラーにも浸透しつつある。その目的や手段自体に疑問はない。しかし、その過程で膨大な文書作成を強いたり、システム浸透の体裁を保つために無理して数値目標を遵守させるなど、現場を疲弊させるケースも少なくないのではないか?トラブルを減らし、事業継続できる筋肉質な組織を作るのは当然だが、やり過ぎて疲労骨折寸前な組織は多いと思う。(2015/04/11)

航空会社を責めて乗員の待遇改善を訴えるコメントが目立つが、大局的にバランス感覚をもって考えるべき。皆さんは安い航空券をネットで探し回ったことはありませんか?消費者が構造上の一番の原因なのかもしれませんよ?乗員の勤務を半分、報酬を倍にして、ごく小さな問題であっても離陸を遅らせ発着時刻を守らず、場合によっては欠航もする。チケットの値段は倍だけど事故確率は低減しましたよとアピールする飛行機にあなた方は率先して乗りますか?ニュースを見てもわかるように航海会社の競争は激しく、行き詰るケースも多い。でもこれらは結局、消費者行動によるものですよね。(2015/04/08)

年収200万円、本当だとしたら米国ではパイロットもマックジョブなんですね。以前、友人にパイロットがいるという取引先の方との雑談で、その方はひとしきりパイロットの厚遇に愚痴っておりました。曰く「連中は月に10日しか働かず年収を軽く1000万円を超えている、酷いもんだ、JALが破たんするのは必然」とのことで。何故月に10日だけなのかというと、10日はメインなので運行業務に就くが残り10日はサブなのでメイン操縦士に問題無ければその日は休日同然に過ごすと。それから、既に尼崎脱線事故を出されている方がいらっしゃいますが、私も同感です。ただ、日本の鉄道事業者の「安全」とは100年に1度、1000年に1度の発生率であってもそのトラブルを断とうとしますが、欧州では100年に1度の発生率はやむなしとする、という話を聞いたことが有ります。それはコストという形で消費者に跳ね返ってくることになります。即ち、因果応報、「より安く!」を求める消費者こそ銃弾を放っている張本人だと思います。(2015/04/08)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

組織を正しい方向に導き、 作り変えていける人が、優れたリーダーです。

ジェニー・ダロック 米ピーター・F・ドラッカー伊藤雅俊経営大学院学長