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訪日客を増やす上で欠かせない「顧客経験の体験」

閣僚や官庁の担当者にも求めたい実践

2015年4月20日(月)

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 以前、コンサルティングの現場でよくやっていたのが、「顧客経験の体験」だ。

 例えば、かつて自動車会社の役員の方々の大半は、自分でディーラーへ行って車を買った経験がなかった。極端に言えば、会社で伝票を切ってもらって、必要な書類を出せば、車が届くという仕組みがあったからだ(もちろん、給与から購入代金や手続き費用は引き落とされるが)。鉄道会社の場合ならば、大抵は切符を買って乗ったことがない。役員用のパスを使えばよいから、というわけである。銀行、百貨店、皆同様の状態だった。

 顧客サービスを考える上でも、競合企業に対する営業戦略を考える上でも、これでは話にならない。そこで、こちらからお願いして、全役員に顧客と全く同様の体験をしてもらう。

 自動車の場合ならば、できれば競合先も含めて複数のディーラーを回り、実際にセールス担当と話をしながら、購入価格や下取り、あるいは付属品についての交渉をしてもらう。当然、納車も顧客と全く同様の条件で、体験する、という仕組みだ。

 こういった体験があって初めて、顧客サービスに関する施策について、深みのある議論ができ、様々な施策の間の優先順位付けも可能になる。さすがに、昨今はこういったことが普通に行われるようになってきたが、当時は、「目からうろこ」という体験をされた役員クラスの方々が随分いたことを思い出す。

もっと基本的にやるべきことがある

 こんなことを書いたのは、海外からのインバウンド旅行客を増やそう、オリンピック目がけて必要な政策を打とう、といった話があちこちで聞こえてくる中、いま一度、「顧客の経験」を実体験する機会を増やすことが重要なのではないか、と感じているからだ。

 インバウンド拡大に向けてのこれまでの政策・施策はかなり効果が出ている。特にビザの緩和、LCC(格安航空会社)の参入拡大が大きく効いているように見受けられる。

 この流れをさらに加速させようということで、全国各地で外国人旅行者向けの無料Wi-Fiの導入・拡大、あるいは複数地域が連携したマーケティングの実行、といった打ち手が目白押しだ。

 ただ、実際に日本に来た旅行客の経験を垣間見ると、もっと基本的なことでやるべきことが残っているようにも思える。

 一番気になるのが、大きな荷物を持っての移動に対する配慮不足。日本の公共交通機関は、空港バスや成田エクスプレスといった空港と都心を結ぶ交通機関を除くと、大きな荷物を抱えて移動する顧客を想定していない。

 例えば、首都圏に到着した海外旅行客の多くは、東京観光の後、京都に抜けるいわゆる「ゴールデンルート」をたどる。ところが、彼ら彼女らが新幹線に乗ると、スーツケースを置く場所がどこにもないのだ。

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「訪日客を増やす上で欠かせない「顧客経験の体験」」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCGシニア・パートナー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経て現在に至る。事業戦略、グループ経営、M&Aなどの戦略策定・実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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