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「コネ採用」は制限されるべきか?

2015年6月17日(水)

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 経済学者が創造する架空の世界を「モデル」という。実際の経済で政策をあれこれ実験すると国民に迷惑がかかるので、政策担当者はモデルといういわば「実験室」で税率を変えたり、規制を変えたりして、政策の効果をシミュレーションする。経済学者はモデルの予測力を上げるためにデータを用いてその妥当性を検証し、必要あれば改良する。

 モデルの中には、現実を模してたくさんの消費者や企業が存在する。政策が変わると彼らも自分の得になるように行動を変え、その結果異なる均衡状態が生じる。政策担当者は少なくともモデルの中において最も効果的な政策が何か見極められるというわけだ。

 筆者の最近の研究もやはり政策の効果を簡単なモデルを使ってシミュレートするものだ。政策の標的はずばり「コネ」。親戚や大学の先輩を頼って企業に就職したというような話を読者の方も聞くことがあるだろう。そういったコネの存在が格差社会の温存の一因になっているという議論は米国でも以前からある。筆者の研究の問いは、「コネを通じた採用を禁止/制限すれば、コネを持たない人の厚生は向上するか」どうか、である。

コネ禁止政策が、コネなし組にもデメリット

 結論は、コネの禁止政策がコネのない人に常にプラスになるとは限らず、場合によってはマイナスになる可能性がある、というものだ。そんなバカな、と思う人がいるかもしれない。例えば毎年10人雇う企業があったとして、この企業はうち5人を現従業員の友達や学校の後輩など、いわゆる「コネ」で採用し、残りの5人だけを正規のルートで採用しているとしよう。

 ある日「コネ」採用を制限する法律が実施されたとする(例えば企業は採用に際して最低1カ月間は求人情報をおおやけにしなければならない、求人1件当たり最低4人は時間をかけて面接しなければならない、人種、出身地、出身校などに関してバランスよく採用しなければならない、コネ採用の疑いがある場合は訴えることができる、など)。

 そのような法律ができれば、企業にとってコネ採用のうま味が減り、代わりに正規ルートによる採用が促進され、コネを持たない人の道が広がる、というように感じるかもしれない。

 そのように感じるのは、10個なら10個という決まった数の仕事の口があって、コネのある人とない人がそれを取り合いしている、というイメージがあるからだ。しかし話はそう単純ではなく、実際の経済では他にも様々な要因が絡み合っているから、コネ採用禁止後もこの企業が毎年10人雇えるとは限らない。

 つまり、労働市場の様々な要因を同時に考慮して政策の総合的な影響を予測する必要がある。そのための強力な経済学モデルが、近年マクロ的労働経済学の基本的な枠組みになっているサーチ・モデル(Search Model)だ。

 サーチ・モデルは、 新古典派のモデルと一線を画し、単純な賃金調整によって労働の需給が均衡するとは仮定しない。むしろ均衡においてすら 労働の過需要(求人)と過供給(失業)が併存し続けると考える。理由は「労働者」や「企業」とひとことに言ってもその中身は千差万別であり、しかもお互いの中身が見えにくいため、両者がベスト・パートナーを見つけてマッチングするのには多分に時間がかかるからだ。これを労働市場の摩擦(Friction)という。

コメント17件コメント/レビュー

どこかの出版社が採用にあたって紹介者が必要としたら、コネ採用とたたかれましたね。今回の記事も似たようなものに感じます。コネ採用というと本人の能力と無関係にコネがあるところからの力で採用されるというイメージです。しかし、記事の内容は違いますよね。あくまで企業の関係者からの紹介で入社試験を受けるということのように感じました。ここの部分の定義をきちんと説明していただかないと、誤解を招きます。まあ、表題は目立つように付けたのでしょうが、中身はもう少し論理的な説明をしてほしかったです。
△リクルートの人が書いた本に、最近の新卒採用でエントリーシートを使った一般公募方式の弊害を取り除くには、紹介による募集を増やした方がよいということが書かれていました。だれが紹介するかですが、多くは、大学の先生や、その企業に勤める先輩ということのようです。これも試験を受けるところまでの紹介で、能力があるかは一般公募と同じように入社試験を受ける前提です。私もこの考えには賛成で全て紹介によるものにする必要はないですが、一般公募の比率は減らした方がよいように感じています。今回の記事の内容もその実感に沿うものでした。(2015/06/18 21:29)

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「「コネ採用」は制限されるべきか?」の著者

五十嵐 洋介

五十嵐 洋介(いがらし・ようすけ)

英エクセター大学経済学講師

東京大学卒業。米ペンシルバニア州立大学でPh.D.取得。専攻はマクロ経済学、ファイナンス。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

どこかの出版社が採用にあたって紹介者が必要としたら、コネ採用とたたかれましたね。今回の記事も似たようなものに感じます。コネ採用というと本人の能力と無関係にコネがあるところからの力で採用されるというイメージです。しかし、記事の内容は違いますよね。あくまで企業の関係者からの紹介で入社試験を受けるということのように感じました。ここの部分の定義をきちんと説明していただかないと、誤解を招きます。まあ、表題は目立つように付けたのでしょうが、中身はもう少し論理的な説明をしてほしかったです。
△リクルートの人が書いた本に、最近の新卒採用でエントリーシートを使った一般公募方式の弊害を取り除くには、紹介による募集を増やした方がよいということが書かれていました。だれが紹介するかですが、多くは、大学の先生や、その企業に勤める先輩ということのようです。これも試験を受けるところまでの紹介で、能力があるかは一般公募と同じように入社試験を受ける前提です。私もこの考えには賛成で全て紹介によるものにする必要はないですが、一般公募の比率は減らした方がよいように感じています。今回の記事の内容もその実感に沿うものでした。(2015/06/18 21:29)

大学入試の「学校推薦枠」みたいなコネと、「裏口入学」に相当するコネだと全く異なりますからね。コネ採用が強いと、例えば地方出身者は様々な機会で都会出身者よりも不利になることが予想される。やはり門戸は平等に開くべきかと思いますが・・・(2015/06/18 10:38)

「コネ」採用は元来は採用した人が問題を起こすリスクを減らす為であったと好意的に考えたい。が、現実は「運命共同体」で「よそ者」を排除する排他的で改革が実行出来ない古い体質である。同族経営が分かり易い。同族経営は創業者のワンマン経営でうまくいくと、その成功経験から抜けられず、時代が変わっても経営トップを同族で固め同じやり方を繰り返す。挙げ句の果てに破綻する会社は多い。「コネ採用」は同族経営と共通点が多い。現代において、コネ採用が一番多いのは地方自治体の役所の職員採用だろう。私の住んでいた滋賀の田舎町では、管理職か市会議員にコネがないと市役所での採用はほぼ無理だと言われている。これは「人は生まれながらにして自由であり平等である」精神に反する慣習であり、即刻禁止すべきだと思う。知人に就職試験を受けるように勧めることは問題ないが、不公平な採用基準の適用は許されない。コネ採用で固められた組織は柔軟性に欠け、「改革」という発想すらない。市町村長などの多選もコネ採用の原因になる。日本中の首長は二期8年を限度とすべきだろう。会社の経営も同じで、いくら成功した社長でも、10年を超えるとほとんどの場合失敗している。役所であれ民間会社であれ、コネ採用は禁止すべきだと思う。(2015/06/17 19:15)

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