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第2章 イラク原油(4)

2006年5月22日(月)

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 バグダッドに来て1週間が過ぎた。

 法務部と資材部の社員、鋼管輸出部の課長代理は一足先に帰国し、残っているのは金沢と高塚だけになった。

 金沢はSOMOに、高塚はSCOPに日参し、話し合いを続けていた。石油省にも足を運んだが、「我々は、日本のpolitical behaviour(政治的振舞い)のお蔭で被害を蒙っている」と一方的にまくし立てられただけだった。

 2人は、毎朝ファリードの事務所で本社からのテレックスを確認し、だいたい午前中に相手と面談、再びファリードの事務所に戻り、テレックスで面談結果を報告するのが日課だった。

 バグダッドは夏の真っ盛りだった。街中のナツメヤシの木が、葡萄の房のような黄金色の実をたわわに付け、うっすらと埃をかぶった緑の葉ごしに見える空は抜けるように青い。空気が乾燥しているので、あまり汗は出ないが、日中は40度以上の熱風が吹き、体力の消耗が激しい。

 その日も金沢は、SOMOとの面談を終え、ファリードの事務所でテレックス・マシーンに向かった。ちょうど昼の礼拝を呼びかけるアザーンが、戸外で聞こえていた。

 「アッラー・アクバル(アラーは偉大なり)
 アシュハド・アン・ラー・イラーハ・イッラッラー(アラーの他に神はなし)
 アシュハド・アンナ・ムハンマダン・ラスールッラー……(ムハンマドは神の使徒なり……)」

 近所のモスクの拡声器から流れ出る抑揚豊かなアザーンを聞きながら、金沢は、旧式のテレックス・マシーンにテープをセットする。幅1.5センチほどのテープは、映画フィルムのように直径30センチほどに巻かれている。

 Eメールの発達でテレックスは姿を消しつつあるが、金沢が入社した頃、東京本社のオペレーターたちは夜明けまでキーを叩いていた。

 五井商事のテレックスは、まず「ZCZC」で通信文の始まりを示す。続いて「NO―B」。Nは燃料本部、Oは海外原油部、Bはイラクなど中東諸国を担当するチームを示す。その後に、3桁の通し番号。最初の桁は各社員に数字が割り当てられており、O番台はチームの責任者を務める部長代理。通し番号に続けて、ハイフンの後に、リファー(言及)する電文の3桁の通し番号。

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「第2章 イラク原油(4)」の著者

黒木 亮

黒木 亮(くろき・りょう)

作家

1957年、北海道生まれ。早稲田大学法学部卒、カイロ・アメリカン大学(中東研究科)修士。銀行、証券会社、総合商社に23年あまり勤務して作家に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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