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第3章 イラン巨大油田(1)&(2)

2006年5月29日(月)

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 1997年12月3日、水曜日――

 金沢が、海外原油部の社員にSOMOとの交渉を引き継いで、3ヶ月が経った。

 その日、東京は快晴。平均風速約5メートルという風の強い日だった。

 永田町の国会議事堂内では、第141回臨時国会の衆議院決算委員会が開かれていた。木製の机や壁は磨き上げられ、シャンデリアが広々とした室内に光を降り注いでいた。

 「……先月、11月19日の読売新聞に『北極に消えた1191億円』『石油公団ずさん支出』こういうことで記事が出ておりました。私たまたまこの問題を調査しておりまして、さもありなん、こういう感覚を持ったのでございます」

 質問者は、新進党の石垣一夫、66歳。大阪府議を20年務め、昨年大阪10区から衆議院に初当選した。

 「石油公団の、不良資産というか、回収不能と予想される金額は、合計4029億円に上る、このように考えられます。年々不良資産が累積している。こういう実態でございますけれども、通産大臣、今の私の申し上げました実態について、お認めになりますか?」

 通産大臣の堀内光雄が立ち上がった。発言者席でマイクに向かって口を開く。

 「今の数字、実態につきまして、公団の方からまず説明をさせてよろしゅうございますか?」

 参考人席から、石油公団総裁の小松國男が立ち上がった。小柄で地味な、典型的役人タイプ。前職は通産省の審議官である。

 「それでは、今、石垣先生ご指摘の……」
 小松は、用意した原稿を見ながら慎重に話し始める。

 「……損失に対しまして、生産中の成功企業からの配当や、利息等の事業収入が累計で7070億円ございます。こういうことで、実際にはその損失をカバーして、なおかつ財務面では問題がない状況にある、かように認識しております」

 官僚的詭弁であった。

 大臣席で発言を聞いていた堀内も眉をひそめた。
(公団運営にかかる経費を無視して、粗利益だけを上げてるじゃないか)

 堀内は、東証1部上場の富士急行の社長を長く務め、現在は会長。『例解経営分析実務』『生産性の測定と適正分配』といった著書もあり、企業財務に明るい。

 石垣議員も激しく総裁に噛み付いた。

 「あなたがおっしゃった7070億円の65パーセントは貸付金利息なんですよ! 本当は受取配当金と受取利息が逆にならなければいかんわけですよ。それでこそ初めてこの開発事業が成功していると大見得を切れるわけです。これは大見得を切れるような内容ではないですよ! どうですか!?」

 これに対して小松総裁は、石油公団のスキームでは融資の方が出資より多いと説明。石垣議員は納得しない。

「今、総裁から色々とお話がございましたけれども、こういう不良資産の増大、あるいはまた回収不能金額の増大について、通産大臣としてどのようにお考えですか?」

 堀内光雄大臣が発言者席に立つ。
「ただいまのご質問でございますが、数字的な問題でございますので、エネルギー庁長官の方から説明をさせていただきます」

 「いやいや、数字的な問題はいいですよ」
 石垣議員が間髪入れずにいった。

 「こういう不良資産が増加し、さらにまた回収不能金額が増加しているという、この現状について、大臣としてどうお考えですか?」

 「色々とただ今のご質問を拝聴致しておりまして、石油開発というものは極めて高いリスクを伴うものでございますが……」

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「第3章 イラン巨大油田(1)&(2)」の著者

黒木 亮

黒木 亮(くろき・りょう)

作家

1957年、北海道生まれ。早稲田大学法学部卒、カイロ・アメリカン大学(中東研究科)修士。銀行、証券会社、総合商社に23年あまり勤務して作家に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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