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第3章 イラン巨大油田(5)

2006年6月19日(月)

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 約3ヵ月後の1999年3月――

 五井商事の金沢明彦は、アンマンのマリオット・ホテルの正面玄関前で、シボレーの大型オフロード車「サバーバン」から降り立った。

 時刻は、正午を30分ほど過ぎたところ。
 全身が疲れでずっしり重く、睡眠も不足していた。

 その日、金沢はバグダッドのアル・ラシード・ホテルを早朝に出発。「炎のヨルダン人ドライバー」イブラヒムの運転で、1000キロの石油街道を突っ走り、ヨルダンに戻って来た。

 バグダッドを発ったのは、朝の4時だった。外はまだ真っ暗。土漠は真空地帯のように空気が澄んでいた。上空は煙るような星空。ヘッドライトで視界が利くのは精々100メートルだった。

 イブラヒムは暗闇の中を時速160キロでぶっ飛ばすので、フロントグラスを見ていると、まるでドライビング・ゲームだった。何かの間違いで道に障害物があると、確実に即死である。

 (イスラム教徒は、死んだら天国に行くと教えられているから、死に無頓着なのか……?)

 途中、真っ暗だというのに、道の真ん中でヒッチハイクをしている男がいて、冷や汗をかかされた。

 怖い思いを我慢していると、やがて背後で朝日が昇り始めた。陽の光に照らされ、土漠が燃え上がるような赤茶色に輝く。道は片側3車線の立派なハイウェー。まるでアリゾナ砂漠の真っ只中の幹線道路を走っている気分だった。

 途中の入出国手続きと休憩を含め、9時間半でヨルダンに戻って来た。経済制裁で疲弊したイラクから戻って来ると、1980年代から現代へタイムトンネルを潜り抜けたようだ。

 アンマンの街は近代都市で、走っている車も真新しい。イスラエルとイラクの間で木の葉のように翻弄されている小国とはとても思えない。

 今回のバグダッド滞在は、1週間だった。

 SOMO(イラク石油輸出公社)に輸出打切りを通告されたのは、1年7ヵ月前。
 その後、数ヵ月間すったもんだ交渉した末、当初日量4万バレルで6ヵ月を予定していた契約を3ヵ月間だけ延長する妥協が成立した。足りない3ヵ月分は、販売を予定していた元売り各社に頭を下げ、勘弁してもらった。

 商社と元売りとの原油販売契約は、最初の供給者(すなわちSOMO)が供給することが前提になっている。SOMOが契約に反して船積みをしなかった場合は、フォースマジュール(不可抗力)で、法律的に商社に供給義務はない。

 商社が「すいません。こんなことになりました」と平身低頭すると、元売りは「ふざけるな! どこか別のとこから探して持ってこい!」と一応怒りはするが、最後は「しょうがないね」となる。

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「第3章 イラン巨大油田(5)」の著者

黒木 亮

黒木 亮(くろき・りょう)

作家

1957年、北海道生まれ。早稲田大学法学部卒、カイロ・アメリカン大学(中東研究科)修士。銀行、証券会社、総合商社に23年あまり勤務して作家に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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