4月21日のワシントンG7会合以降、不均衡問題への関心の高まりから一時109円割れまで急速に進んだドル安局面は、このところやや一服感を見せている。5月下旬以降はむしろ米国の利上げ継続観測の強まりや、エマージング(新興諸国)市場から流出した資金のドル回帰などを受けてドルの戻りが進み、足元のドル・円レートは年初1月時点での平均(115円48銭)とほぼ同水準の114円台後半から115円台半ばでの推移となっている。
年末に1ドル100円台前半を予想する声が多い
もっとも今後については、こうした足元のドル上昇は遠からず一段落し、その後は再び円高・ドル安圧力が強まると見る向きが多いようだ。筆者は先頃ウォールストリートの複数のエコノミストに面談する機会を得たが、彼らの多くは今年末から来年初に向けて1ドル100円台前半程度までドル安が進むと予想していた。彼らのドル安予想の論拠は、基本的には巷間指摘されるように、日米金利差の縮小見込みや不均衡問題への懸念にあるようだ。
足元では米国の利上げがこれまでの市場予想に比べやや長期化するリスクが強まる一方で、一時は6月中との声もあった日銀のゼロ金利解除時期に対しては、このところの株価下落もあって後ズレの可能性を市場は織り込みつつある。しかし、米国の利上げ打ち止めと日本の利上げ開始の時期が遠からず訪れること自体は間違いないだろう。このため金利差要因から円高圧力が加わり易くなることは十分に予想される。また、不均衡問題にしても構造的なドル安圧力となり易いファクターであることには違いない。
とはいえ、実際にこうした理由から今後年末に向けて円高・ドル安が進むかというと、そのシナリオには多分に不確実性が伴う。振り返れば、米国の双子の赤字懸念によるドル安トレンドの持続を予想する声が支配的だった2005年の為替相場が、一転して金利差着目によるドル高へと流れを大きく変えたことは記憶に新しいところだ。
また、その金利差にしても、過去の経験からは、将来の金利差の方向性が足元の為替レートの方向性に影響を与えてきたという明確な関係は見いだせない。日米の実質短期金利差(米国の実質政策金利から日本のそれを引いた値)とドル・円レートの推移を見る限り、為替レートは金利差に先行して動くというよりも、むしろ過去1年程度前の金利差の方向性との相関が強い。昨年のドル高基調も2004年以降の米国の利上げによる金利差拡大の影響がラグを伴って表れたと考えることも可能であり、もしそうならば、今後しばらくドル高が続く可能性も否定できない(図1)。
このように、この先半年程度という比較的短期的な観点から見た場合、どちらかと言えばドル安に向かう可能性が強いと見られるものの、不透明感も多分に残る状況だ。
長期的には購買力平価に連動する
では、今後数年といったより長期のトレンドを考えた場合にはどうだろうか。企業にとっては今期の為替レートが期初の事業計画における想定レートに比してどう動くかといったことはもちろんだが、中長期的な方向性についてのイメージをつかんでおくことも、中期計画などを策定する上では同様に重要なことだろう。
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1964年大分県生まれ。87年一橋大学経済学部卒業、大分銀行入行。94年米国オレゴン大学大学院留学。96年同大学院経済学修士取得、富士総合研究所入社。同経済調査部、ニューヨーク事務所長などを経て、2004年より現職。著書に『ベーシックアメリカ経済』(共著、日経文庫)など。論文に『米国住宅ブームの帰結をどう読むか』(みずほ総研論集・2005年1号)など







