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第4章 サハリン銀河鉄道(3)

2006年7月10日(月)

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 「まったく、あの法務部長、とんでもない奴ですよ!」

 翌日の午前中、ユジノサハリンスクの街を歩きながら、五井商事財務部の若手が憤慨した。

 「確かにあれはひどいね。法律事務所とつるんでるんじゃないか?」
 スーツ姿の金沢がいった。手には黒い革の書類鞄。

 白樺並木の広い通りの名前は「共産党大通り(カムニスティーチェスキー・プロスペクト)」。日本時代は通りの端に樺太神社があったので「神社通り」と呼ばれていた。

 「裏で金を貰ってるとか、そこまでいかなくても高額の接待なんかを受けてる可能性は十分あると思いますね。必要もない調査をさせたり、別のプロジェクトのミーティングの時間までチャージさせてるんですから」

 財務部の男の言葉に金沢は頷く。

 「ところで、今のニューヨークの法律事務所は、どういう経緯で雇われたわけ?」

 「あれはアキレス・オイルと親しいってことで、彼らが引っ張ってきたんです」

 「なるほど」

 「一応ロンドンとモスクワにもオフィスを構えてるんで、他のスポンサーも、まあいいかと。……しかし、あんなひどい癒着をしてるとは予想外でした」

 財務部の若手は苦々しい顔つき。

 「タイミングを見て、別の事務所に変えるべきですよ」

 金沢は、そうだね、といいながら、相手の横顔を見る。

 財務部の若手は、横長の黒縁眼鏡をかけ、すらりとした身体に黒っぽいスーツ。商社マンというより、音楽関係者に見える。パソコンに滅法強く、海外に留学していたわけでもないが、英語の議論にもまったく物怖じしない。

 (こういう商社マンが出てきたんだなあ……)

 2人は、雪を頂いた標高1045メートルのチェーホフ山を正面に見ながら、東の方角に歩いていた。

 ユジノサハリンスクは、吹き溜まりのようなロシア辺境の街である。旧ソ連時代の灰色の団地が建ち並び、中古の日本車がたくさん走っている。

 政府関係の建物には、白、水色、赤のロシア国旗が翻り、埃っぽい道端で女たちがピロシキを売っている。街ではアジア系の顔をよく見かける。日本軍によって連れて来られた韓国人たちの子孫だ。

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手嶋 龍一 作家・ジャーナリスト