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第4章 サハリン銀河鉄道(5)

2006年7月24日(月)

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 翌日の午前中、亀岡は黒塗りの大型乗用車で、石油省に向かっていた。石油省は、トーニチの事務所よりさらに南のアヤトラ・タレガニ通りにある。

 亀岡の隣りに、テヘラン事務所長がすわっていた。2人ともワイシャツにスーツを着ているが、ネクタイはしていない。1979年のイスラム革命以来、ネクタイは西洋の習慣であるとして、イランでは着用されない。

 「常務、今朝社内メールで秘書室から届いてました」

 テヘラン事務所長がA4判の用紙に印刷した書類を差し出した。

 「亀岡常務殿 経営会議資料 対外厳秘」

 来週開かれる経営会議の資料だった。

 亀岡はページを繰る。

 『時価会計、連結会計の導入による、決算の見通しについて』

 表題の下の文字と数字を目で追う亀岡の表情が次第に険しくなって行った。

 「会計ビッグ・バン」によって、来年(2000年)3月期決算から、時価会計や連結会計が導入される。時価会計は、不動産や有価証券などを時価評価し、連結会計は、従来50パーセントを超える持株比率の子会社のみを連結対象としていたのを改め、持株比率が低くても親会社の支配力や影響力が強ければ連結対象とする。

 トーニチは多くの販売用不動産や子会社を抱えており、「会計ビッグ・バン」の荒波をもろにかぶる。資料には、来年3月期の連結決算見通しが書かれていた。

 「売上 2兆9640億円
  経常利益 63億円
  当期損益 ▲2480億円
  うち特別損失 3890億円(不動産関係 1680億円、連結対象子会社関係 1273億円、有価証券評価損 356億円、貸倒引当金および特別退職金 581億円)」

  
 「会計ビッグ・バン」の影響で、3890億円の特別損失計上を余儀なくされるということであった。トーニチの自己資本は約1200億円なので、大幅な債務超過に陥る。

 すでに株価は1ヶ月ほど前に100円を割り、90円にじりじり近づいている。

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「第4章 サハリン銀河鉄道(5)」の著者

黒木 亮

黒木 亮(くろき・りょう)

作家

1957年、北海道生まれ。早稲田大学法学部卒、カイロ・アメリカン大学(中東研究科)修士。銀行、証券会社、総合商社に23年あまり勤務して作家に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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