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第4章 サハリン銀河鉄道(6)

2006年7月31日(月)

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 亀岡や十文字たちが石油省を訪問した日の夕方――

 米系投資銀行ゴールドスミス・ブラザーズのシンガポール現法では、コモディティ・チームの幹部たちが集まっていた。

 会議は、総勢300人が働く広々としたトレーディングフロアーの壁沿いにあるガラス張りの部屋で行なわれていた。

 「……やっぱり、貯蔵タンクは必要か?」
 チームのトップを務めるアメリカ人の男がいった。眼鏡に鬚面。

 楕円形のテーブルを10人余りの男女が囲んでいた。

 「いちいち現物を買ってきてデリバリーしてると、手間もコストもかかってしょうがない。試算してみたが、タンクを買うか借りるかした方が安い」
 と南アフリカ系白人の石油トレーダー。

 「タンクを持ってれば、キャッシュ・アンド・キャリーもできる」

 キャッシュ・アンド・キャリーとは、現物を買うと同時に先物を売る裁定取引。保管費用や金利負担といった経費を含めて現物を期日まで所有するコストの方が先物価格より低ければ、確実に儲かる。

 「だいたいタンクの1つも持ってなきゃ、価格操作もできん」
 別のトレーダーがいった。

 「先物だけじゃ影響力も限られてるからな」

 シンガポールの石油市場の取引はNYMEXなどに比べれば少ないので、価格操作が容易だ。特に「プラッツ・タイム」と呼ばれる午後5時から5時半にかけて、プラッツ(Platts=米国マグロウヒル・グループのエネルギー商品市況情報会社)のスクリーンで取引が集中的に行なわれるので、投機筋などが意図的な売りや買いを入れる。

 (注)現在の「プラッツ・タイム」は、午後4時から4時半です。

 「タンクがあれば、客から現物を預かって、それを担保にデリバティブ取引をやることもできる。セールスにとっても、品揃えが多くなって有難い」
 セールスチームの幹部のシンガポール人がいった。

 「モルガン・スタンレーなんかは、全米にタンクを持って、ユナイテッド航空をはじめとするエアラインに固定価格で燃料を供給している。我々も航空会社に食い込むには、タンクが必要だ」
 真ん丸いフレームの眼鏡をかけた小柄な秋月がいった。

 固定価格で供給するということは、裏でデリバティブ取引をやって鞘を抜いているということだ。秋月の頭には、ジェット燃料の大口買付をしているチャイナ・エイビエーション・オイル(中国航空油料)のことがあった。

 会議が終わって秋月が席に戻ると、日本の石油元売会社の自給部の課長から折り返し電話がほしいと、ヤフー・メッセンジャーで連絡が入っていた。

イラスト 時刻は、午後6時半を回ったところ。この時刻の電話は、実際の取引より、相場見通しなど情報収集目的が多い。

 「……相変わらず弱いですね」

 東京で残業をしている相手はぼやくような声。
 「今売ってもクラックは、ケロシンが4ドル99(セント)、ガスオイル(軽油)が3ドル4(セント)ってとこですか」

 クラックとは、石油製品と原油との価格差(クラック・スプレッド=製油所マージン)。この幅が開かないと、元売りは儲からない。

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