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第5章 ハタミ大統領来日(1)

2006年8月7日(月)

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 2000年5月――

 「サハリンB」の財務委員会が、東京・大手町の東洋物産本社で開かれていた。

 「……Our Friends Greenpeace visited Molikpaq and complained virtually on everything.(我々の友達のグリーンピースが『モリクパック』にやって来て、プロジェクトのすべてが気にくわないと文句をいったそうだ)」

 アングロ・ダッチ石油の社員で「サハリンB」のプロジェクト・ファイナンス・マネージャーを務めているイアン・ジョンストンがいった。ひょろりと背が高い年輩のイギリス人で、いつも人を食ったような微笑を浮かべている。

 「なになに……」

 会議用テーブルの中央にすわった初老の日本人男性が眼鏡を外し、配られた資料を読む。サハリン・リソーシズ・デベロップメント社のCFOだ。

イラスト 2ページの資料は、「サハリン環境ウォッチ(Sakhalin Environmental Watch)」という地元の環境団体が、「できるだけ多くのマスコミ関係者に転送して下さい」と送信したEメールのコピーだった。

 「……on 15th May the Greenpeace ship Arctic Sunrise approached the giant Molikpaq oil platform……(5月15日に、グリーンピースの船『北極の日の出』号が巨大なモリクパックに近づいて……)」

 白髪のCFOは大きな声でメールを読み上げる。

 「しかし、あの辺の海はまだ流氷があるよなあ?」

 CFOがジョンストンの方を向く。

 「『北極の日の出』号は氷海でも進めるそうだ」

 ジョンストンが手元の資料に視線を落とす。

 「全長49.62メートル、重量は949トン……連中が使い始めるまでは、捕鯨用の船だったとさ」

 何人かが笑った。グリーンピースは捕鯨に断固反対だ。

 北極の日の出号は、モリクパックから700メートルの地点まで近づき、活動家たちが3つの高速ボートに分乗し、「No More Oil」「Ниет Загряэнению Морей(ニエット・ザグリャズニェーニュ・モーレィ=海を汚すな)」と書かれた旗を振って抗議したという。

 「……モリクパックが設置された海底から、14万立方メートルの泥が掘られ、オホーツク海に投棄された。このため、生まれたばかりの魚の生存が困難になり、また、漁業にも悪影響を与えている」

 CFOがEメールを読む。

 「えー、さらに問題なのは、モリクパックの内部の重石にするため、海岸に近い場所の土を40平方キロにわたって掘り、エビやカニの棲息に悪影響を与えた。また、モリクパックの基礎と周囲を補強するため、ナホトカ港から取った何十万立方メートルもの石を海中に沈め、漁業や、絶滅の危機に瀕しているコククジラの生存に悪影響を与えた」

 会議用テーブルにすわった20人余りの人々が手元のコピーの文字を追う。

 「……さらに情報が必要な方は、サハリン環境ウォッチのディミトリー・リスィツィンにご連絡下さい、か。……なるほど」

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