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第5章 ハタミ大統領来日(3)

2006年8月28日(月)

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 10月27日、金曜日――

 金沢は、丸の内の五井商事本社にあるサハリン・プロジェクト部のオフィスで、書類に目を通していた。

 午前中の気温は16度前後、空は薄曇りである。

 7階のオフィスでは、14人の社員が2つの島に分かれてすわっている。各人の机の上にパソコンのフラット・スクリーンがあり、席の後ろに胸の高さほどの灰色のスチールキャビネット。隣りはオーストラリア・プロジェクト部、その隣りがオマーン・プロジェクト部で、いずれも天然ガス開発をやっている。

 フロアーの壁沿いにいくつかある面談用ブースでは、部員たちが保険部や運輸部の担当者たちと打ち合わせをしている。

 金沢が目を通していた英文の書類は、アングロ・ダッチ石油、東洋物産、五井商事の間で締結する予定の株主間協定書(Shareholders Agreement)の草案(ドラフト)だった。10日ほど前に、アキレス・オイルがサハリン・リソーシズ・デベロップメント社の37.5パーセントの株式をアングロ・ダッチ石油に譲渡した。

 その一部を東洋物産と五井商事が譲り受け、最終的に3社の持株比率を55、25、20パーセントにする予定だ。それに伴い、株主間協定書も改訂しなくてはならない。

イラスト 3社は、過去半年以上にわたって、新協定の内容を巡って激しい交渉を続けてきた。アングロ・ダッチ石油が新オペレーターとして、裁量権を極大化しようとするのに対し、東洋物産と五井商事は、独断専行を許さないよう抵抗した。

 たとえば、アングロ・ダッチ石油が取締役会会長と副会長を自社から出そうとしたのに対し、交渉の末、副会長は日本勢から出すことになった。また、最終的な投資判断についても、過半数の株を握るアングロ・ダッチ石油が決めるのではなく、日本側株主が歯止めをかけられる仕組みを設けた。

 「金沢君、ちょっと来てくれるか」
 有楽町側の窓を背にしてすわった部長が呼んだ。

 「シェアホルダーズ・アグリーメントの方はどうだ?」
 50代前半の部長は、席にすわったまま訊いた。

 「今、法務部に見てもらってますけど、ほぼ問題ないと思います」
 部長の前に立った金沢が答える。

 「そうか」
 部長が頷く。

 「一つ頼みがあるんだけどな」

 「はい」

 「イランがオイル・スキームをまたやるそうだ。さっき、JBIC(ジェービック=国際協力銀行)の理事からうちの副社長に電話で協力要請があった」

 オイル・スキームは原油代金の前払い融資(輸出前貸し)である。

 「JBICからいってきたんですか? ……ということは、国策案件ですね」

 普通は商社の方からJBICに頼みに行く。

 「基本的に商社サイドはノーリスクだそうだ」

 「そうじゃないと困りますよね」
 部長が頷く。

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