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第5章 ハタミ大統領来日(4)

2006年9月4日(月)

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 イラン大統領セイエド・モハンマド・ハタミは、予定通り10月31日火曜日の午前中、特別機で羽田空港に到着した。頭に黒いターバンを巻き、胡麻塩の口髭、僧衣に茶色いマント姿。空港で外務大臣河野洋平の出迎えを受け、宿泊先である元赤坂の迎賓館で、NHKや朝日新聞のインタビューに応じた。

 翌11月1日は、迎賓館での歓迎式典に出席。午後1時から衆議院本会議場で演説した後、総理官邸で森喜朗首相と会談。総理主催の晩餐会に出席した。

 共同声明では、経済協力、テロ行為への非難、人権に関する両国間対話の継続、国連安保理改革の必要性などの他、イランの巨大油田開発における協力や、原油代金前払い融資(オイルスキーム)を含む貿易関係の重要性が謳われた。

 平沼通産大臣とザンガネ石油相の会談も平行して行なわれ、十文字が用意した大臣同士の共同声明も調印された。第8項には、国際協力銀行(JBIC)が総額30億ドルのオイルスキームを実施すると記された。

 続く11月2日、大統領は東京工業大学で「日本の詩とイランの神秘主義」と題して記念講演。その後、皇居宮殿の「竹の間」で天皇陛下と会見し、天皇主催の昼食会に出席。翌11月3日に日本を後にした。

 12月―― 

 金沢は丸の内2丁目にある五井商事燃料本部の応接室で、トーニチの法務部長らと向き合っていた。30億ドルのオイルスキームに関するミーティングであった。

イラスト 「……以上、まとめて申し上げますと、(1)SPC(特別目的会社)の社長は6商社の輪番制にすること、(2)ILSA(イラン・リビア制裁法)が適用されないことの確認、(3)JBIC(ジェービック)宛の『原油取引に係る書面』をイラン原油の輸入義務を課さない文言にすること、弊社としてこの3点が必要と考えています」

 金沢が手元のメモを見ながらいった。

 「おっしゃられること、ごもっともです」
 とトーニチの法務部長。

 物いいはソフトだが、したたかな関西人だ。「これに参加して、アメリカから制裁喰らったらかなんですからなあ」

 「弁護士の意見書と外務省の言質を取ってほしいですね」
 金沢の傍らにすわった五井商事財務部の部長代理がいった。隣りに、海外原油部の若手担当者。

 「分かりました、分かりました。さっそく手配します。……おい、ほら、五井商事さんのご要望をちゃんとメモせんか」

 法務部長に急かされ、傍らの部下が慌ててペンを走らせる。

 「でも、外務省の言質まで要りますかねえ?」

 手配するといいながら、法務部長は話を蒸し返す。

 「外務省とJBICの両方から言質を取るべきだと思います」
 と金沢。

 「万一、ILSAにもとづいて制裁を課されたとき、日本政府から『知らない』なんていわれたら、目も当てられないですから」

 「外務省とJBICの両方ですか……。難儀なことですなあ」
 相手は渋い表情。

 「それから、『原油取引に係る書面』ですが、いただいたドラフトでは、イラン原油を融資の最終償還日である12年後までずっと買い続ける義務を商社に課しているように読めます。ご存知の通り、イラン原油の輸入は1年ごとのターム契約で、その時々の市場環境などを考慮して取引数量を決めています。したがって、文言を変えるか、別途JBICの言質を取る必要があると思います」

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