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第5章 ハタミ大統領来日(6)

2006年9月19日(火)

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 数日後――

 十文字一(ともんじはじめ)は、故郷に帰省した。実家は、越前地方の町にある。

イラスト 東京から東海道新幹線で滋賀県の米原まで出て、特急に乗り換えて福井へ。ここまでで3時間半かかる。福井からは鈍行列車だ。妻と1男1女の家族を東京の官舎に残しての1人旅だった。妻は、元通産審議官の娘で、東京以外は田舎と馬鹿にしている。

 車窓の外に、雪に覆われた福井平野と白山に連なる山並みが見えていた。

 (日本も独自のイラン外交ができて、原油も確保できる……か)

 列車に揺られながら、十文字は数日前の亀岡吾郎のはしゃぎぶりを思い出していた。

 オイルスキームが調印された晩、十文字は亀岡らの案内で、オーチャードロードに出かけた。トーニチが電力会社などの接待に使うカラオケバーであった。カラオケルームに入ると、馴染みの中国系とマレー系の美人ホステスがやって来た。

 「さあさあさあ、十文字さん、十文字さん」
 亀岡は早口のだみ声でいい、十文字のグラスにブランデーを注ぐ。

 その日、30億ドルの融資調印とイラン油田の開発で、久々にトーニチ株が急騰した。

 「日本もようやくアメリカ追随外交を止めたかと、イランの人たちは喜んでますなあ」

 シンガポール支店長以下3人のトーニチ社員たちは、亀岡に命じられるまま、元気一杯に軍歌を歌っていた。

 (まったく体育系だな、こいつら)

 十文字は、隣りに侍(はべ)った胸の大きいマレー系のホステスに酒を注がせる。

 亀岡はひとしきりはしゃぐと、元々酒に強くないせいもあり、両手をだらりと垂らして寝てしまった。

 (結局、あいつは、イランの商売さえできればいいんだろう)

 イランに融資される30億ドルも、トーニチが商売の材料にしようと触手を伸ばし始めている。

 十文字は、窓外を過ぎ去って行く北陸の冬景色を眺めながら、苦虫を噛み潰したような顔つきだった。

 やがて列車は小さな駅に停車した。ホームに降りると、雪が斜めに降りしきっていた。 

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