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第6章 豊饒のオホーツク海(3)

2006年10月10日(火)

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 ソシエテ・フランス銀行が帰ると、昼食になった。

 会議室に、サンドイッチ、タンドリー・チキン、サモサ、果物、ジュース、コーヒーなどが載ったワゴンが運び込まれた。スポンサー3社の十数人は、紙の皿に料理を取り、三々五々集まって食事を始める。

 ホワイトボードにマジックペンで図を描き、食べ物を頬張りながら、第2フェーズは、とりあえず1トレイン(1系列)で行くか、それともいきなり2トレイン(2系列)を立ち上げるべきか議論している者もいる。

 1トレインなら第2フェーズの総投資額は85億ドルでなく、60億ドル程度ですむ。コンソーシアム内では、LNG販売契約が確保できていない現状では、1トレインで行きたいという考えが大勢だ。

 ただし1トレインだと、IRR(internal rate of return=内部収益率)は1桁で、13~14パーセントが期待できる2トレインに比べて大きく見劣りがする。

 IRRは、プロジェクトから得られる将来のキャッシュフローの現在価値とプロジェクトに投資する金額が一致する割引率である。したがって、IRRが借入や資本の調達金利を下回ると、プロジェクトは採算割れする。

 現在、ドルの6ヶ月LIBOR(ライボー=ロンドン銀行間出し手金利)が5パーセント前後で、ロシアのプロジェクト・ファイナンスの場合は2~3パーセントの利鞘を乗せられるので、損益分岐点のIRRは7~8パーセントになる。

 エネルギー価格が現在のように低迷を続けた場合、1トレインで行くと、金利が上昇した途端、「サハリンB」は赤字に転落だ。

 金沢が東洋物産の男たちと、ソシエテ・フランス銀行のプレゼンテーションについて話していると、長身のジョンストンがゆらりと近づいてきた。

 「あれじゃ駄目だよねえ。リーダー以外は全然経験がないし。僕らの方がよっぽど知ってるよねえ」

 いつもの人を食ったような顔に苦笑を浮かべた。

 大手米銀、シティ・マンハッタン銀行のプレゼンテーションは午後2時から始まった。アメリカ人、イギリス人、日本人など8人のチーム。

 リーダーは40歳くらいの小柄なイギリス人女性だった。黒い髪をショートカットにし、英国で人気のある「PINK」の青いチェックのシャツに、黒のジャケット、黒のスラックス。常に両手を机の上で軽く組んで話す。

イラスト 午前中の打ち合わせのとき、誰かが「あの女はライブラリアン(図書館司書)」といっていたが、まさにそんな感じの風貌だ。肩書きはマネージング・ディレクター。オックスフォード大学を卒業し、シティ・マンハッタン銀行に去年吸収された英国系マーチャント・バンクで働いていた。

 全員が話したソシエテ・フランス銀行と違って、シティ・マンハッタン銀行は、経験豊富な3人が主に話すスタイル。

 ロンドンのプロジェクト・ファイナンス部のディレクターは、真面目そうな中年のイギリス人男性。やはりオックスフォード大学から英国系マーチャント・バンクに進んだ人物で、香港勤務の経験がある。

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「第6章 豊饒のオホーツク海(3)」の著者

黒木 亮

黒木 亮(くろき・りょう)

作家

1957年、北海道生まれ。早稲田大学法学部卒、カイロ・アメリカン大学(中東研究科)修士。銀行、証券会社、総合商社に23年あまり勤務して作家に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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