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第6章 豊饒のオホーツク海(4)

2006年10月16日(月)

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 「アングロ・ダッチ・タワー」最上階のダイニング・ルームに上がると、無数の灯火に輝くロンドンの街が一望の下に見渡せた。

イラスト 空とテームズ川が深い藍色の夜の帳に覆われて行くところだった。川面が橋や街灯の照明を反射して波立っており、風があるのが分かる。

 川沿いの遊歩道に、薄オレンジ色の街灯が一定間隔で点っていた。左手の方角に、1年3ヶ月前にできた、高さ135メートルの巨大観覧車「ロンドン・アイ」。白い光を放ちながら、ゆっくりと回転していた。

 その先の川向こうに、ビクトリア・ゴシック様式の茶色い時計塔「ビッグベン」が聳え、そばに同じくゴシック様式のウェストミンスター寺院。

 右手に視線を転じると、通天閣に似たブリティッシュ・テレコム・タワー、「ロンドンの秋葉原」トッテナム・コート・ロードに建つセンター・ポイント・ビル、ネルソン提督像が建つトラファルガー広場とロンドン随一の繁華街ピカデリー・サーカス。白とオレンジ色の光で埋め尽くされた街は、地平線の彼方まで広がっている。

 「きれいですねえ……」
 壮麗な夜景を眺めながら、五井商事財務部の若手が嘆息した。

イラスト 「ここに来るのは初めて?」
 シャンペングラスを手にした金沢が訊いた。

 「ええ、初めてです。金沢さんは?」

 「ロンドン駐在時代に何度か来たよ。偉い人と一緒に」

 相手が頷く。

 「英五(えいご)のエネルギー部の最大の仕事は、アングロ・ダッチ石油とのリレーションだから」

 英五は英国五井商事の略称。

 来客用ダイニング・ルームは、高い天井に大きな窓。一方の壁には金の額縁に入った油彩画が掛かっている。室内にシャンデリアの眩い光が満ちていた。

 「このダイニング・ルームで、世界のオイル・ビジネスが決められてきたわけですか」

 貝殻細工を商うイーストエンドのユダヤ商人から身を興し、日清戦争では日本の武器と軍需物資調達で利益を上げ、ロスチャイルド家と組んでロシアの石油をアジアに輸出していたイギリスの会社と、スマトラ島で油田を発見し、着々とアジアでの石油ビジネスを拡大していたオランダの会社が手を結び、当時アジアに触手を伸ばしつつあったロックフェラー財閥のスタンダード石油に対抗する世界第2位の石油会社アングロ・ダッチ石油を作ることに合意したのは、今からちょうど100年前の1901年のことだ。

 周囲では、先ほどまで会議室で議論していた十数人が、食前酒を手に談笑していた。やがて、長テーブルに着席して、夕食が始まった。

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