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第6章 豊饒のオホーツク海(5)

2006年10月23日(月)

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 1ヵ月後――

 金沢は丸の内2丁目の本社のデスクで「サハリンB」の社内申請書を作成していた。

 第2フェーズでは、最大で17億ドル(約2100億円)の出資をしなくてはならない。これは、プロジェクト・コストを85億ドルとし、ファイナンスが付かない場合の持株比率(20パーセント)に応じた資金負担額だ。もしファイナンスが60億ドル付けば、資金負担は5億ドル(25億ドルの2割)になる。いずれにせよ、巨額の投資だ。

 申請書は、燃料本部、財務部、法務部、経理部、審査部などの関係各部に回覧され、最終的に副社長以上で構成される社内の最高会議で決済される。

 パソコンと手元資料に交互に視線をやりながら、申請書のリスクマネー推移表をタイプしていると、電話が鳴った。

 「金沢君、久しぶりに昼メシでもどうだ?」
 高塚だった。

 約4年前に「炎のドライバー」イブラヒムの運転するオフロード車で、一緒にバグダッドまで1000キロの石油街道を旅した鋼管輸出部の部長代理だ。

 東京は桜が満開の季節だった。

 「今日はあったかいなあ」
 大柄で均整の取れた身体つきの高塚がいった。大学時代は棒高跳びの選手。

 丸の内仲通りは、昼食に出かける会社員たちで賑わっていた。2人は永代通りを渡り、金融機関などが入っている24階建てビルの地下に向かう。

 地下1階に、オフィス街のど真ん中とは思えない京風会席料理の店があった。ガラスの自動扉を入ると、和服姿の女性に迎えられた。店内の細い通路は石畳。

イラスト ガラス壁の外に竹が植えられ、京都の小路を歩いているような錯覚に陥る。女性が膝をつき、個室のふすまを開けた。

 「よく急に予約が取れましたね」
 小さな座敷の掘り炬燵式テーブルにすわった金沢がいった。

 店は、大手町界隈のビジネスマンの会合の場所として人気がある。

 「客とのメシが、先方の都合でキャンセルになったんだよ」

 「なーんだ」

 2人は笑った。

 「最近は、どの辺を追っかけてるんですか?」
 熱い煎茶を一口飲んで、金沢が訊いた。

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「第6章 豊饒のオホーツク海(5)」の著者

黒木 亮

黒木 亮(くろき・りょう)

作家

1957年、北海道生まれ。早稲田大学法学部卒、カイロ・アメリカン大学(中東研究科)修士。銀行、証券会社、総合商社に23年あまり勤務して作家に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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