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第7章 メキシコの幻想(1)

  • 黒木 亮

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2006年11月6日(月)

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 9月――

 資源エネルギー庁石油・天然ガス課長の十文字一は、メキシコシティにいた。

 目的は、チコンテペック油田群開発権の獲得だ。国の中部、東シェラマドレ山脈南端のメキシコ湾岸沿いに位置する陸上油田だ。1999年8月以来、石油公団がペメックス(PEMEX=国営メキシコ石油公社)と生産性向上と開発計画策定のための油層モデルの構築を目的として、共同研究を行なっていた。

 十文字は、数日前からメキシコシティでペメックスのE&P(exploration & production=探鉱・生産)部門の幹部と話し合い、ニューヨーク経由で帰国するところだった。

 「……まあ、協議は順調だったよ」

 スーツにノーネクタイの十文字は、得意げな顔でコーヒーをすすった。

 市内西寄りの大公園「チャプルテペックの森」近くのホテルのカフェテリア。周囲のテーブルでアメリカ人のビジネスマンや観光客たちが朝食をしていた。

 「これで、チコンテペックにも日の丸が立つな」
 十文字は悦に入った表情。

 「しかし……」
 メキシコの日本大使館に出向している経済産業省の若手が顔を曇らせる。

 「今回の入札は、ブルゴスじゃないんですか?」
 目下の人間に徹底して傍若無人な相手に、恐る恐る訊いた。

 ブルゴスは、メキシコ北東部、米国テキサス州との国境沿いにあるガス田だ。

 1930年に自国の石油産業を英米資本から取り返したメキシコでは、憲法27条(石油法)で、石油・天然ガスの上流事業はペメックスが独占すると定めている。

 しかし、1994年に起きた「テキーラ・ショック」(ペソ暴落)で経済が疲弊し、石油産業への投資が十分にできない一方で、電力部門を中心にガス需要が増大しているため、今般「サービス契約(multiple-service contract)」という法的に権益が移転しない形で、ガスの探鉱・開発に外資の参入を認め、近々入札を実施する計画だ。

 「ばーか、小さいやつを狙っても意味ないんだよ」
 十文字は軽蔑も露にいった。

 ブルゴス・ガス田は、推定埋蔵量が8兆5000億立方フィートで「サハリンB」の半分程度の規模があるが、今回入札にかけられるのはその一部だ。

 「小さい仕事をやってもなあ、うちの役所じゃ評価されないんだよ」
 十文字は椅子にふんぞり返る。

 チコンテペック油田群は、世界最大のガワール油田(サウジアラビア)を上回る700億バレル程度の埋蔵量を持つといわる巨大鉱区だ。

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