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第7章 メキシコの幻想(2)

2006年11月13日(月)

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 米国政府は、国際テロ組織・アルカイダが同時多発テロを実行したと断定。アフガニスタンを支配するイスラム原理主義のタリバン政権に対し、アルカイダの指導者オサマ・ビンラディンの身柄引き渡しを要求した。

 タリバン政権がこれを拒否したため、10月7日、米英軍が空爆を開始。11月13日に首都カブールを、12月7日にタリバン最後の拠点カンダハルを制圧し、政権を壊滅させた。12月下旬には、アフガニスタン暫定行政機構が発足する予定である。

 この間、米国では、12月2日にエンロンが連邦破産法第11条(会社更生手続)を申請して破綻。エンロンだけでなく、ダイナジー(テキサス州)、CMSエナジー(ミシガン州)、ウィリアムズ(オクラホマ州)といったエネルギー企業の株が軒並み売られ、多くのエネルギー・トレーダーが職を失った。

 同時多発テロ発生と同時に上昇した原油価格は翌日からずるずると値を下げ始めた。テロ当日に30ドルを突破したブレント(北海原油)は17ドル台、WTIは18ドル台となり、テロ発生前より10ドルも安くなった。

 12月中旬――

イラスト 「ねえねえ、唄って、唄ってー」

 胸元が大きく開いた服のひろみちゃんが金沢にマイクを押し付ける。色白の若いホステスである。

 銀座8丁目、並木通りのビルの3階にある小ぢんまりしたナイトクラブ。

 「はい、では、唄わせていただきます」

 金沢は、フレームなしの眼鏡を片手で押し上げ、歌集からすばやく選曲する。
 「じゃあ、『TSUNAMI』入れて」

 昨年大ヒットしたサザンオールスターズの曲である。高校野球の入場行進曲にも使われた。

 ひろみちゃんがリモコンでカラオケ・マシンに選曲を入力し、メロディーが始まる。

 「風に戸惑うぅ、弱気な僕ぉーく……」
 金沢がバラード調の歌を器用に唄い始める。

 「おお、この曲いいなー」

 近くにすわっていた大手電力会社の燃料部長がいった。手に水割りのグラス。

 燃料部は、商社が原油やLNGを売り込む窓口だ。

 「なんか、しんみりきますよねえ」
 と傍らのサハリン・プロジェクト部長。

 2人は入社間もない「小僧っこ」時代からの付き合いだ。

 電力会社の燃料部と商社のエネルギー部門の社員は、お互いに若手、中堅、部長、役員とサラリーマンの階段を上がりながら、付き合いを続ける。

 「いやー、やっぱりサザンはいい。青春だねえ」
 燃料部長は太った身体を小さく揺らせ、リズムを取る。

 金沢は唄いながら、上手く行ったと思う。サザン・オールスターズは若者にも年輩者にも受けがよく、接待には便利だ。

 そばで、五井商事からサハリン・リソーシズ・デベロップメント社に出向し、LNGのマーケティングを担当している部長代理が、電力会社の課長と一緒になってホステスたちと楽しげに話していた。

 「……想い出はぁ、いつの日も雨ぇー」

 金沢が唄い終わると、盛大な拍手が沸いた。

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