「石川 宏の「鳥瞰!日本の競争力」」

今こそ、一層の円高対応力を強化する時

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2006年11月20日(月)

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 2006年9月中間決算で、トヨタ自動車(7203)の営業利益が前年同期比2840億円増加したうち円安効果による分が1900億円にも達した。ライバルのホンダ(7267)も円安効果が914億円と全体の営業利益増加の634億円を上回ったことで象徴されるように、現在、日本の輸出企業は円安でかなり潤っている。

円相場は必ずしも過小評価ではない

 そこで、改めて表面化してきたのが円の過小評価論だ。その根拠として円の総合的価値を表す実質実効為替レートの低下が指摘されている。実効為替レートは、特定の2つの通貨の為替レートだけでは分からない通貨の対外競争力を、総合的にとらえるための指標だ。

 実効為替レートには名目と実質の2つがあり、名目実効為替レートは相手国との貿易取引量で加重平均し、基準時点を決めて指数化する形で算出する。実質実効為替レートは為替レートを日本と相手国の物価指数の比率を掛けて実質化し、貿易取引量で加重平均して指数化されたものだ。

 円の実質実効為替レートはこの10月に100.3(1973年3月=100)とプラザ合意当時の1985年9月(94.8)以来の水準に達するほど大きく低下し、輸出競争力の観点では有利になっている。しかし、輸出競争力を見るこのレートが、現実の市中レートに必ずしも反映されるとは言えない。実効為替レートに限らず、物価調整して円の総合的価値を見る購買力平価でもそうだ。

 購買力平価は消費者物価指数、卸売物価ベース、輸出物価ベースなど複数のレートがある。75年以降で輸出物価ベースの購買力平価が市中の為替レートと一致したのは、米国景気が一気に減速からマイナス成長に向かい始めた78年、プラザ合意後急激に円高に変わった88年、1ドル80円割れまで円が急騰した95年とわずか3回で、いずれも経済的に大きな変化が起こった時である。

 2000年以降で見ると市中レートは、ほとんどが卸売物価ベースでのレートに近い動きを示している。ちなみに、直近の購買力平価でのレートは、卸売物価ベースで1ドル111円、輸出物価ベース68円、消費者物価ベースで145円である。

 実質実効為替レートの低下は日本だけではない。FRB(米連邦準備理事会)によれば、米ドルの実質実効為替レートと比較すると、2005年から2006年10月までの期間では円の下落率が9.8%と、米ドルの下落率である0.8%を大幅に上回るが、2001年以降で見ると円の下落率は18%、米ドルの20%とその差はかなり縮小する。

まだファンダメンタルズに弱さが残る

 為替相場の決定要因は多い。ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)では、経済成長率、経常収支、そして消費者物価である。そのほかに金利、地政学や外交戦略的要因などが加わる。

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著者プロフィール

石川 宏(いしかわ・ひろし)
石川証券投資研究所代表
(証券経済アナリスト)

石川 宏

1940年東京生まれ。63年早稲田大学商学部卒業後、日興証券(現日興コーディアル証券)入社、調査部勤務。日興リサーチセンター企画調査部長、同社ロンドン駐在員事務所長、日興証券情報部長、東京証券総合研究所常務、東海東京証券及び東海東京調査センター顧問・首席アナリストを経て、2003年に独立、現職。
(写真:川口 愛)



このコラムについて

石川 宏の「鳥瞰!日本の競争力」

日本の実力はいかばりか。証券アナリストとして豊富な経験を持つ筆者が地道に足で稼いだ情報と、長年蓄積してきたデータ分析の手法をもとに、日本の秘めた競争力、そして改善点はどこにあるのかを提示していく。

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