• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

10億ドルが180億ドルに

金融理論を覆すエール大学基金を率いる1人の男

  • ロバート・シラー

バックナンバー

2006年12月5日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 私の勤めている米エール大学は、大学基金の運用を20年以上にわたってある1人の男、デビッド・スウェンソンに任せてきた。この間、基金の資産規模はわずか10億ドル強から180億ドルにまで増えた。

 平均利回りは年率で16%を超えている。これは全米の主要大学基金の中で最も収益性が高いはずだ。その勢いは衰える気配はない。6月を終わりとする最新年度の利回りは、22.9%だった。

 この20年の間にエール大学の学長は何人か替わったが、スウェンソンは今の地位にとどまっている。彼は、入れ替わったどの学長、いやほかの誰よりも、この大学に貢献してきた。大学とは、カネよりも知識が重視される場所だが、180億ドルあれば新たな知識を多数生み出す環境を整えることができる。

 180億ドルをエール大に通う1万1500人の学生に分けると、1人当たり150万ドル以上になる。エール大学の施設や所蔵美術品は、それぞれ数十億ドル以上の価値を持つことから、施設の資産価値まで鑑みれば、1人当たりの学生は多額の資産を持つことになる。

効率的市場仮説を覆す

 スウェンソンは、どうやってこれほどの収益を上げたのだろうと、皆が不思議に思っている。特に我々エール大関係者は。

 何しろ、この大学では多くの者が「効率的市場仮説」を教えている。生き馬の目を抜くような世界の金融市場で、通常以上の投資収益を得るのは不可能だという理論だ。この理論によれば、市場平均を上回る者は、単に運が良いだけだということになる。

 各種の調査研究がこの理論を裏づけているようだ。例えば、2004年の米カリフォルニア大学のブラッド・バーバーとテランス・オディーン、台湾の国立政治大学の李怡宗と劉玉珍による研究では、台湾株式市場で株取引を行った個人デイトレーダーの取引ごとのデータを入手した。

 この調査によると、2半期連続で、手数料を差し引いたうえで儲けを出したデイトレーダーは、わずかに上位の1%だった。利益の中央値は4000ドル程度で、取引の努力を考えれば取るに足らないものだった。

運なのか

 市場を出し抜くための努力とは全く意味がないと結論づけるのは簡単な中で、スウェンソンのような存在がいる。彼が一貫して高い収益性を上げるのは、運によるものなのだろうか。

 ベストセラーになった投資指南シリーズ『金持ち父さん貧乏父さん(Rich Dad, Poor Dad)』の著者であるロバート・キヨサキは、自書のタイトルとテーマを、高学歴の実父と、8年生(中学2年生)で中退した友人の父親との比較を基にしている。

 キヨサキによると、貧しいが学者肌の父親は、実社会で何かを成し遂げることについて悲観的な見方をしがちだったため、息子が何かに挑戦するときにやる気を削ぐようなことを言ったという。一方で友人の父親は、何か大きなことをやり遂げようとするのを楽しんでいた。キヨサキが金持ちだったのは単なる偶然だろうか?

 キヨサキは無理に刺激的な内容にした面があるかもしれない。しかし、ファイナンス理論を教える教授たちが市場の効率性と市場での取引で金儲けをする無益さについて見解を述べるのを聞くと、私はよくキヨサキのことを考える。多分、学者の多くは、自ら進んで実社会で成功を収めようとするのを難しいと感じるだろう。私はキヨサキの著書を読んだことがあると言う学者に会ったことがない。

共通する長期投資の姿勢

 スウェンソンは経済学博士号を持つインテリだ。周囲にいるのも学者ばかり。だがどういうわけか、彼はこの効率的市場の話を聞いても意気消沈することなく、資産運用で成功を収めている。

 ここにはある傾向が存在するように思われる。同じアイビーリーグの2校、ハーバード大学とプリンストン大学も資産運用でほぼ同様の成功を収めている。ジャック・マイヤーが管理するハーバード大基金は、過去10年で平均利回りが15.2%だった。

 スウェンソンは17.2%、アンドリュー・ゴールデンが管理するプリンストン大基金は15.6%だった。実は、ゴールデンは1988~93年にエール大でスウェンソンの下で働いていた。

コメント1

「ロバート・シラーの「21世紀の新・金融秩序」」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

環境の変化にきちんと対応して、本来提供すべき信頼されるサービスを持続できる環境を作り出さなければならない。

ヤマトホールディングス社長 山内 雅喜氏