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秘密のベールを脱いだ巨大ファンドの素顔

2006年12月18日(月)

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 これまで秘密主義を是としてきた米国の大手ファンドが、そのベールを脱ぎ始めた。11月、総額260億ドルのプライベート・エクイティ・ファンド及びヘッジファンドを運用するフォートレス・インベストメント・グループが、株式公開を申請した。

 続いて今月に入って、約130億ドルのヘッジファンドを運用するシタデール・インベストメント・グループが20億ドルの社債発行を発表した。SEC(米証券取引委員会)に提出された両社の目論見書からは、通常は知ることができないファンドの実態を垣間見ることができる。

 フォートレスの株式公開は、少数のオーナーによって秘密裏に経営されるファンド管理会社自体の株式を一般に売り出すものであり、米国では前例がない。また、シタデールの社債発行は、これまで銀行との相対取引に依存していたヘッジファンドの負債調達を、より安定した資金に置き換えようとするものであり、これもまた新しい試みである。いずれも今後のファンドの展望を占うものとして、メディア及び業界関係者の注目を集めた。

 以下ではフォートレスの目論見書を例に、大手投資ファンドの内部を少しのぞいてみることにしよう。

急成長で運用資産を260億ドルに増やしたアセットマネジャー

 フォートレスは、1998年に大手資産運用会社出身者により創業された。2001年時点では運用資産が12億ドルに過ぎない「中堅」投資会社だったが、その後わずか5年間で現在の260億ドルにまで拡大した。運用利回りは年平均収益率で30%強というのでその実力は確かだが、近年のファンドバブルが追い風となっていなければ、ここまでの急速な規模拡大は実現できなかっただろう。

 同社は現在、4つの形態のファンドへの投資助言を行っている:
(1)企業の経営権取得を目的としたプライベート・エクイティ・ファンド。運用資産は136億ドル
(2)クレジットリスクが高い企業の社債、その他流動性が低い証券へ投資する「ハイブリッド」ヘッジファンド
(3)公開株や債券、為替、商品など流動性が高いものへの投資を行なうヘッジファンド。(2)と(3)を合わせて運用資産は94億ドル
(4)上場している2つの不動産ファンドで、運用資産は30億ドル

 こういった多岐にわたる資産の投資を、市場の動きにかかわらず絶対的なリターンをベンチマークとした成功報酬形式で行なうファンド運用会社のことを総称して、オルタナティブ・アセット・マネジャー(代替的資産運用会社)と呼ぶ。フォートレスはこのオルタナティブ・アセット・マネジャーとしては、有数の地位を築いた。

 目論見書では、投資ポートフォリオの内訳がかなり詳細に公開されている。開示されているのは過去の時点のもので、投資先の個別銘柄までが開示されてはいない。とはいえ、どのような資産配分をしているかは、ファンドの最終的なパフォーマンスに大きな影響を与える。

 このようなポートフォリオの公開は、ファンドにとっては秘伝のタレを明かすようなもので、本来ならば避けたいことのはずだ。フォートレスはこのようなコストを払ってでも、あえて上場という選択肢を選んだことになる。

潤沢な運用報酬

 今回の株式公開で、フォートレスは10%の株式を売り出す計画であり、公開後も創業者は議決権の90%を保有する。一般の投資家は経営の意思決定に参加できるわけではない。あくまでファンド運営会社が得る収益=運用報酬から配当を得ていく形で運営に参加していくのにすぎない。

 この運用報酬は、大きく分けて2つからなる。1つは固定的な収入であるファンド管理報酬であり、もう1つは運用結果に対して支払われる成功報酬である。一般的な報酬の相場は、管理報酬が運用資産の1~2%、成功報酬がキャピタルゲインの20~25%である。フォートレスの得る報酬も、おおむねこの水準にある。

 成功報酬については、リターンがある水準を上回った場合にのみ付与されるようにハードルレートが設けられている。例えば、プライベートエクイティについては最低6%から10%である。また、ヘッジファンドについては、過去に達した純資産価値の最高額をベンチマークとするので、仮にある年にマイナスのリターンが出てしまうと、次年度以降はその負け分を取り戻すまでは成功報酬が発生しない仕組みになっている。

 このような報酬体系を基に、フォートレスは直近の2006年1月から6月の半期で1億7000万ドルの利益を叩き出した。通年に換算すると、同社に在籍する250人の投資担当者1人当たり、約130万ドルもの利益を計上していることになる。これは既に実現済みの利益であり、ベース給与を差し引いた後の利益である。実際にはさらに大きな未実現の成功報酬が控えていることを考慮すると、その収益力は驚くべきである。

錬金術のカラクリ

 このような運用報酬体系を念頭において同社の財務諸表を見てみると、「錬金術」とも言われる投資ファンド運用会社のカラクリがよく理解できる。フォートレス自身は各ファンドに数%程度しか出資していないが、ファンドのゼネラルパートナー(無限責任組合員)としてその業務運営を実質的に支配しているため、わずかな自己資金を元手に、運用資産全体のキャピタルゲインの20~25%を享受できるわけだ。

 上記の財務諸表(米国会計基準に基づくものであり、フォートレスの運用資産全体を必ずしも表しているわけではない)によれば、2005年12月期では「出資者持分」1億2000万ドルに対して120億ドル近くの資産を保有し、2億ドル近い純利益を上げていることが分かる。これには会計上は認識が留保されている4億5000万ドルもの成功報酬が含まれていない。運用が成果を上げている限りは、少ない資金を元手に、毎年巨額の報酬を手にすることが可能であることが分かる。

なぜ投資ファンドが上場するのか?

 これまでの実績から見ても、フォートレスは未上場のままでも潤沢なキャッシュを、今後も手にすることができるはずだ。にもかかわらず、自社の財務内容を公表し、今後も厳しい情報公開が要求されることになる株式公開という道を、彼らはなぜ選んだのだろうか?

 目論見書では株式公開の理由として以下の事項が掲げられている。

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「秘密のベールを脱いだ巨大ファンドの素顔」の著者

岩瀬 大輔

岩瀬 大輔(いわせ・だいすけ)

ライフネット生命保険社長兼COO

1976年埼玉県生まれ。98年に東京大学法学部を卒業後、ボストン・コンサルティング・グループなどを経て、2006年、副社長としてライフネット生命保険を立ち上げる。2013年6月より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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高坂 晶子 日本総合研究所調査部主任研究員