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第8章 ユダヤ人ロビイスト(6)

  • 黒木 亮

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2007年1月9日(火)

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 「……行った……」

 3人は呆然と立ちすくみ、ホームの彼方に消えてゆく黄色い流線型の車体を見送った。

 目の前の改札と出入国審査から、1日の仕事を終えた職員たちが引きあげ始める。

 「……どうする?」

 振り向いた高塚の顔は青ざめ、汗が流れ落ちていた。

 「あとは……車で行くしかないんじゃないですか?」

 金沢の顔からも汗が噴き出ていた。

 「車で?」

イラスト 「ドーバーかフォークストーンまで行って、フェリーか車専用の貨車で海峡を渡るんです。ロンドンに駐在してたとき、夏休みに車でフランスに行ったんですけど、そのときはP&Oの船で英仏海峡を渡りました」

 P&O(Peninsular and Oriental Steam Navigation Company)は、大英帝国全盛期の1837年に設立された英国の大手船会社。

 「それ以外だと、ヘリコプターでもチャーターするか、どこかの港から船に乗るか、BR(British Rail=英国々鉄)で行けるところまで行くか……」

 「どれも若干突拍子もない感じだな」

 高塚が、ハンカチで顔の汗を拭う。

 「英五(えいご)のメタル(金属部)とも相談してみましょう」
 ボストン・タイプの眼鏡をかけたフランス人女性が、訛りの少ない英語でいった。

 3人は、エスカレーターで1つ上の階のウォータールー駅構内に戻り、携帯電話で英国五井商事の金属部を呼び出した。

 鉄骨剥き出しの高い天井で、大きな丸い4面の時計が時を刻んでいた。列車の発着を報せるアナウンスがたえず響き渡り、コート姿の人々が足早に行き交う。構内の喫茶店やパブでは、列車を待つ人々がお喋りをしたり、新聞を読んだりしている。

 「……わかった。至急車を借りる」
 10分間ほどやり取りし、高塚が携帯電話のスイッチを切った。

 「やっぱり、車がベストのようだな」

 金沢とフランス人女性が頷く。

 「この近くでレンタカーして南に向かおう。その間に、英五のメタルに船か貨車の予約をさせる」

 ドーバーもフォークストーンも英国の南東端にある。

 「ユーロスターの到着口を出て、道路を渡ったところに、レンタカー会社があるはずです」

 高塚が頷いて、歩き始めた。

 「あ、ちょっと待って下さい。地図を買っていきましょう」

 3人は、駅構内の文房具店「WH Smith」で、英国とヨーロッパの道路地図を買った。

 レンタカー会社は、赤い看板のAVIS(エイビス)だった。瑠璃色のフォードの4ドア・セダンがあった。料金は2日間で130ポンド(約2万4000円)。
 
 トランクに入札書類の入った大きな3つの鞄を入れ、運転席には金沢がすわった。高塚が助手席でナビゲーター、フランス人女性は後部座席。

 瑠璃色のフォードは、夜のロンドン市街を南東の方角に向かって走り始めた。

 繁華街はすぐに途切れ、暗い通りに入った。

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