「岩瀬 大輔の投資ファンドは眠らない」

ヘッジファンドに干渉するな

悪玉説は正しいのか

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2007年1月22日(月)

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 “Hands Off Hedge Funds”――ヘッジファンドに手を触れるな(※注

 ファンドへの規制強化を求める声が高まる中、挑発的なタイトルの論文が、フォーリン・アフェアーズ誌の最新号(2007年1/2月号)に掲載された。

 ワシントンポスト紙のコラムニストであるセバスチャン・マラビー氏が執筆したこの論文は「ヘッジファンドへの懸念は事実よりも無知や矮小化された風刺に基づくものであり、明らかに誇張されている」としてファンド悪玉説を非難し、ファンドへの規制強化を求める流れに対して、一石を投じている。

2006年ファンド事件簿

 2006年はヘッジファンドの破綻や詐欺、インサイダー取引などが話題になり、規制強化の議論が再燃した年だった。最も大きかったのが、95億ドルの運用資産を抱えた大型ヘッジファンド、アマランス・アドバイザーズの破綻である。2006年9月、1人のトレーダーが、それまでは大きな利益を上げていた「ハリケーンによる天然ガスの高騰」に賭ける投資に失敗し、資産の3分の2近い60億ドル(約7200億円)を失った。

 後に明らかになったのは、ブライアン・ハンターなる32歳のトレーダーが、本社があるコネチカット州から遠く離れたカナダのカルガリー市に1人でオフィスを構え、ファンド全体を破綻させるほどのポジションを取ることが許されていたという、杜撰なリスク管理の実態だった。アマランスの投資家の中に企業や州政府の年金基金が名を連ねていたことから、「一般市民をヘッジファンドのリスクから守る必要がある」という大義名分の下、規制強化の動きを進めるきっかけとなった。

 規制強化の動きには、ファンドが政治的圧力を行使していることを匂わせるような出来事も影響しているようだ。SEC(米証券取引委員会)があるファンドのインサイダー取引容疑を調査していたのが突如、打ち切られるという事件があった。

 ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、大手ファンドであるペコー・キャピタル・マネジメントのインサイダー取引疑惑にウォール街の超大物で、現在はモルガンスタンレーCEO(最高経営責任者)のジョン・マック氏が関わっていた可能性が浮上したところ、マック氏への取り調べを主張していたSECの担当者が突如解任され、調査自体が打ち切られたというのである。

 さらに、ヘッジファンドが高利回りの実績を偽って、投資家の資金を持ち逃げするという「古典的」手法の詐欺事件も何件もあった。バイオウ・グループなるヘッジファンドは、この手を通じて総額4億5000万ドルもの損失を投資家に負わせた。中には集めた資金で立派なオフィスを構え、一部の投資家と結託して偽の財務諸表や残高証明を見せるなど、かなり込み入った手口をもって投資家を欺く事件もあったそうだ。

 その他にも、私募債を引き受ける際に同時に株式の空売りを行うインサイダー取引、M&A(会社の合併・買収)前後の株価のミスプライシングを捉えて裁定取引を行うM&Aアービトラージ取引に際する株価操縦、あるいは大手ファンド幹部が投資家に不正に経費を請求していたなど、大小様々な事件があった。

ファンド自由主義者の戦い

 このようなファンドへの規制強化の第一歩として昨年から開始されたのが、SECへの登録義務だ。しかし、この登録義務が実施開始された2006年2月からわずか4カ月後、驚くべき事態が起こった。あるヘッジファンドのオーナーであるフィリップ・ゴールドスタイン氏が2005年12月の申し立てに対し、2006年6月の連邦控訴裁判所判決で、SECにヘッジファンドを規制する権限はなく、SECが定めた運用会社の登録義務は「無効」と判断されたのである。

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著者プロフィール

岩瀬 大輔
(いわせ・だいすけ)
ネットライフ企画 取締役副社長

岩瀬 大輔

1976年埼玉県生まれ。97年司法試験合格、98年東京大学法学部卒業、2006年ハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction)。ボストンコンサルティンググループ、インターネット・キャピタル・グループ、リップルウッド・ホールディングスRHJインターナショナルを経て、現職。2008年初旬の開業を目標に、新しい生命保険会社の立上げを準備中。著書に、『ハーバードMBA留学記 資本主義の士官学校にて』(11月16日刊、日経BP社、ISBN:4-822-24552-7、価格1890円)。

(写真:川口 愛)



このコラムについて

岩瀬 大輔の投資ファンドは眠らない

運用資産が1兆ドルを越えたと言われる投資ファンド。世界を駆けめぐる欧米のバイアウトファンド、ヘッジファンドなどの投資ファンドは活動の幅を広げ、日本への投資も増やしてきている。海外ファンドは何を求めているのか。その実態は。グローバルな情報網を持つ筆者が、最新動向を紹介しながらファンド資本主義の姿を描きます。

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